3,宇宙法則(1)

 次の日、雄介が学校から帰って来ると、アロンが部屋に見当たらない。雄介がアロンを探すと押し入れの中から話し声が聞こえてきた。アロンが誰かと話す声を雄介は聞いてしまった。


 「そうです。彼の名前は天野雄介と言います。地球年齢で17歳です。そうですか地球滅亡の時期が早まっているのですね。それではなるべく早く彼を教育します。ええ、彼なら大丈夫です。私に任せて下さい。また連絡します。それでは失礼致します」

 アロンが押し入れから神妙な顔をして出てきた。


 「アロン」雄介が声を掛けた。

 「あ!雄介、帰っていたの」アロンは、雄介が部屋に居たので驚いた。

 「アロン、いま誰かと話していた」

 「雄介、もしかして聞いていたの」


 「地球滅亡って何なの。時期が早まっているって何」

 「聞いちゃったんだ。それならしかたないな。全部雄介に話そうか。そしたら君も、もっと気合が入るかも知れないな」そしてアロンは雄介に本当のことを話した。


 「雄介、しっかり聞いてくれよ。僕がこの地球に来た本当の目的を話すよ。雄介、地球は後数年で滅亡してしまいそうなんだ。そこで地球が滅亡して地球人類が無くなってしまう前に、地球を救うことができる人物を教育して、ギャラクシーユニオン加入プレゼンテーションを成功させることなんだ。そしてギャラクシーユニオンの力で地球を滅亡から救う為にやって来たんだ」

 雄介は、アロンの言葉に驚きが隠せなかった。


 「地球が後数年で滅亡すると言うのは本当のことなのかい」

 「そうだよ」

 「そうだよって簡単に言うなよ。地球を救うことができる人物って僕のこと。地球人類の運命が僕に掛かっているの。そんなのやっぱり無理だよ。僕がもしプレゼンに失敗したらどうなるんだい」


 「それはしかたないね。地球は滅亡してしまうかもね」

 「だったら僕にはやっぱり無理だよ。絶対に無理だよ、自信なんてないよ。頼むからそんな大役を僕に押し付けないでくれよ」雄介は、自分にのしかかった使命を恐怖に感じだした。


 「雄介、だから消極的になってはダメだって言っただろ。やってもみないうちからできないって言わないって約束したよね」

 「それは分かっているけど僕には大役すぎるよ」


 「大丈夫。僕がついているから安心しな」

 「いや、どう考えても僕は普通の人間だ。僕にできる訳が無いよ」雄介はすっかり怖気づいてしまった。


 「雄介がそこまで言うなら仕方ないな。僕はもう諦めてアンドロメダに帰るよ」

 「ちょっと待ってくれよ。僕じゃない他の誰かを探さないの」雄介はアロンがあっさり諦めると言ったので心配になった。


 「アロン、君が諦めて帰ってしまったら地球は滅亡するじゃないか。じゃあ聞くけど、なぜ僕じゃないとダメなの、そこを教えてくれよ」

 「分かったよ雄介。しっかり聞いてくれ。君はね宇宙波動エネルギーに選ばれた人間なんだ」

 アロンは、雄介に説明した。


 「この宇宙には宇宙波動エネルギーと言って偉大な力が存在している。その宇宙波動エネルギーは、この宇宙を創り膨張させて来た力だ。そして宇宙波動エネルギーは宇宙の全てを把握し、宇宙の全てが記憶され、そして未来のことも分かっている。

 

 アンドロメダ星には長老がいて、その長老はその宇宙波動エネルギーにコンタクトすることができるんだ。そしてその長老が宇宙波動エネルギーと交信して、この地球を救うことができるただ一人の人物を探したんだ。それが雄介、君なんだよ」


 雄介はアロンの言葉を聞いて絶句し、身震いしてきた。

 「何で僕なんだ、何故この僕が地球を救える唯一の人間なんだよ。信じられないよ」


 「雄介、信じられないなら信じなくてもいい、でもやってみろよ、雄介にはできると宇宙波動エネルギーが言っているんだから、とりあえずやってみろよ。他の誰かじゃ絶対に無理なのは分かっているんだから、やってみろよ。それでダメなら仕方ないだろ」


 雄介は、アロンの力強い言葉に何となく納得してきた。そして雄介は考えた。自分以外の誰かには無理なら、自分がやるしか無いのかもしれないと思い出した。


 「分かったよアロン、そこまでアロンが言うなら頑張ってみるよ。でもアロン、君が協力してくれなければ今の僕には絶対に無理だよ」

 「雄介、心配しなくて大丈夫だよ。僕が全力で協力するから安心してくれ」

 「自身は全く無いけど、じゃあとりあえず頑張ってみるよ。アロン宜しくお願いします。ところでアロン、地球はなぜ滅亡するんだい」


 「それはね、この宇宙が誕生して以来続いていた宇宙の膨張スピードが、最近遅くなってきているらしんだ。長老の話によると、それはこの宇宙を創り膨張させて来た宇宙波動エネルギーの力が減少しているからなんだ。それに伴ってマイナスの力のダークパワーが活発になり、この宇宙に不必要と判断された、文明の遅れた争いの絶えない惑星をそのダークパワーが淘汰しているんだ。


 最近になって惑星が回る恒星が突然膨張を始め大爆発を起こす現象がこの宇宙の中で続いている。始めはなぜ恒星が爆発を起こすのかが分からなかったんだが、爆発を起こす恒星には必ず文明を持った惑星が存在していて、その文明を持った惑星の人々は争いが絶えず、そのうえ犯罪も多く悪い病気も蔓延していることが分かったんだ。


 それで地球が回っている太陽も調べたら異常な活動を起こしているんだ。アメリカのナサはもう太陽の異常に気が付いている。もし太陽が大爆発を起こしたら地球もその爆発に飲み込まれて、地球人類の滅亡は避けられないだろうね」


 「そうなんだ。地球人は争いが絶え無し、犯罪も多いから仕方ないことなんだろうか」雄介は力なく言った。

 「この宇宙に偶然など無い。これも必然的に起こることなんだ。今の地球は紛争は有るし、犯罪は多いし、自然もかなり破壊している。それに私利私欲ばかりでエゴの固まりだ。そんな地球が回る太陽は、地球の為に存在しているんだ。今のままの地球だと太陽が異常を起こすのも当たり前で、地球滅亡も絶対に避けられない」


 「どうしたらいいんだよ、アロン」

 「だから言っただろ。地球全体が平和で愛に満ち溢れた星になればいいんだよ。そうなれば必然的にギャラクシーユニオンに加入できて、地球滅亡は無くなるよ。全てが自然なんだよ」


 「ナサが太陽の異常に気が付いているのなら、何か手を打たないのかな」

 「今の地球の技術力では、太陽爆発回避は絶対に無理だろうね。ナサは、そのことも分かっているから太陽の異常のことは公表しないんじゃないの。いまアメリカは、地下に大規模な避難施設を建設中だよ。でも極一部の選ばれた人しかそこには入れないだろうし、もしそこに入れたとしても太陽が爆発したら意味ないね。


 地球がギャラクシーユニオンに加入できれば、ギャラクシーユニオンの力を借りることができて、上手くいけば太陽爆発は無くなる。しかしギャラクシーユニオンは連合に加入していない星のことを助けたりしないから、必ず雄介の力で地球を連合に加入させないといけない」


 雄介は思った。地球が平和になって、愛に満ち溢れた星になったらギャラクシーユニオンに加入することができるのだろうか。もし加入できたらギャラクシーユニオンの力で太陽の爆発回避は可能なのだろうか。


 「アロン、さっき太陽爆発が早まりそうだと言っていたけど、いつ頃になりそうなんだい」

 「当初は地球時間で4年後と予測されていたけど、1年位は早まりそうなんだ」


 「じゃあ今から3年後なんだね。僕がプレゼンする予定も3年後の銀河総会だから、1年早めないといけないね。アロン、早速プレゼンの下書きをする為に、宇宙法則をまとめなければならないと思うんだけど、宇宙法則は他には無いの」雄介は、地球の為に自分がやるしかないのだと思い、やる気が出てきた。


「宇宙法則第九条は『心が体を支配する』と言って病気や怪我の根源は、その人が使う心、つまり感情が基になっていると研究されているんだ。たとえば、怒る、責める、悲しむ、寂しい、恨む、ねたむ、嫌う、嫉妬、心配する、不安、不平不満、強いこだわり、くよくよするなどのマイナスの感情を使うと病気や怪我をするんだ。


 感情もエネルギーなんだ、感情のエネルギーは身体の全ての細胞に降り注がれている。 心から悪い感情のエネルギーを出していると、その悪いエネルギーは、身体の細胞を悪いものへと変化させていくんだ。それが病気だよ。病気や怪我は、悪い感情のエネルギーが引き金となって起こるんだ」


 「じゃあ病気や怪我をしない感情は何なの」

 「感謝、喜び、楽しい、好き、前向き、やる気などのプラスの感情だよ」

 「だったら常にプラスの感情でいる人は、病気にならないの」


 「そうだよ。そんな人は、病気も怪我もしないんだよ。医学も発達してほとんどの病気は治るけど、病気になってからその病気を治すのは、時代遅れも甚だしい話だ。病気や怪我をしない感情や体を作らないとダメだね。雄介も今日から何が有ってもプラスの感情で過ごすことだね。病気になんかなっている暇はないよ」


 「分かったよアロン。僕も常に良い感情で過ごすように頑張るよ」

 「それから、宇宙法則第十条は『生きる為に夢を持て』だよ。夢は生きる希望だよ。夢や希望が無いと人は生きていけない。命が途絶えてしまうんだ。自殺してしまう人も、自分の人生に夢や希望が持てなかったり、夢が叶わないと思って諦めてしまったりした人だよ。地球人は、若い人でも夢を持っていない人が多いね。


 ただ欲を持つのは良くない。欲は望むだけで努力をしないことだ。でも夢や希望は持たないといけない。将来こんな生活がしたいとか、こんな物が欲しいとか、こんな人物に成りたいとか何でもいいんだ。自分の将来に夢と希望を持つために、色んな経験をしたり、色んな本を読んだり、色んな所に行ったりとか若いうちにするといいね。色々経験した中から自分が興味を持ったことに夢を持って、それに向かって努力するといいんだよ」


 「夢を叶える為に頑張るといいんだね」

 「そうだよ、夢を叶える為に努力し行動することは良いことだ。そして夢が叶った自分の姿を常に、鮮明に思い描いて夢が叶った自分に成りきるといいね。それと身近な人の全てを受け入れ、心から愛し仲良くするんだ。たとえ君のご両親がどんなご両親だとしても、もし健在ではなかったとしても、ご両親のことは心から愛し尊敬し感謝するんだ。これは夢を叶える為の最大の条件の一つだよ。その条件がまず整っていないと、いくら夢の実現の為に努力しても絶対に夢は叶わないんだ。まず条件を整えてから夢の実現の為に行動し努力するんだ」


 「条件を整えると夢は叶うの?」

 「前にも話したことが有るけど、夢を叶える条件は幾つかある。もし君が今までの人生で、自分の夢が中々叶わない人生を歩んでいるのなら、それは夢を叶える為の条件の何かが整っていない証拠だ。君がこれからの人生で自分が思い描いた夢が次々と叶う人生を歩みたいのであれば、君の考えや行動、つまり人生の習慣を変える必要があるんだ。君の人生習慣を夢が叶いやすい習慣に変えて夢を叶える条件が整えば、夢は必ず現実の物になってくるようになるんだ」


 「それは、凄いことだね。でも夢や希望が無くて死んでしまったり、夢が有っても叶わなかったりで、命を落とす人がいるのはとても辛いことだね」

 「生きていると辛くて苦しいと思うこともあるけど、その辛さを自分を成長させてくれている試練だと思って感謝して克服すれば、辛さ以上の幸せが訪れるんだ。生きているから幸せにもなれるんだ。それにこの世に生まれてきたということは、幸せになるために生まれてきたんだ。自分は不幸だとか、生きる価値が無いとか思う人は、幸せになれる生き方が分かっていないだけなんだ」


 「幸せになれる生き方?」

 「この宇宙法則は宇宙波動エネルギーからのメッセージで、人が幸せに生きる為の心の法則なんだよ。決して夢物語でもSFの話でもないんだ。真実の法則なんだ。この宇宙法則の一つ一つをしっかり頭に入れて、雄介も幸せに生きていくんだ。そしてこの法則を自分の考えや行動の基本にしていくことで、自分が思い描いた夢が次々と叶っていく人生を歩むことができるんだ。

 

 いいかい雄介、夢を叶える条件を整理して言うよ。

 1、自分の夢をはっきりさせる。

 2、夢が叶った自分を想像し、それに成りきる。

 3、身近な人の全てを受け入れ、心から愛し仲良くして感謝する。

 4、宇宙法則十カ条をしっかり頭に入れて、自分の考えや行動の基本にする。

 5、悪い習慣をやめて、夢を叶える行動の為の時間を作る。

 6、夢を叶える為に楽しんで行動する。楽しんで行動しないと何も変化しない。

 7、夢に強く執着しない。夢は叶って当たり前として行動あるのみ。

 8、結果が表れるまで決して諦めず行動を止めない。結果は必ず遅れて訪れる。


 雄介、この夢を叶える条件をしっかり頭に入れて、君の夢を現実のものにしてくれ。

 宇宙法則は第十条で終わりだ。ここまでのまとめをしておこう。目的や期日も変更しないといけないね」


 目的:ギャラクシーユニオンに地球が加入して、地球を滅亡の危機から救いう。

 期日:2年後のギャラクシーユニオン総会日

 地球代表:天野雄介

 方法:宇宙法則を順守し、全ての地球人が平和で愛に満ち溢れた人となり、他の星とも友好的で、ギャラクシーユニオンの一員としてふさわしい星であることをアピールする。

 

宇宙法則

 第一条:心が全ての根源である

  常に良い心で過ごせるよう、全ての人、物、出来事に心から感謝していく。

 

 第二条:同質が集結する

  良い性質を十分に発揮し、良い質が自分の周りに集まるように努める。

 

 第三条:全てはバランスを保っている

  まずは身近を充実させ、他も充実させるように努める。

 

 第四条:執着しない

  何事にも執着せず、素直に淡々と取り組む。

 

 第五条:全てが必然

  全てが必然的に起こっていることを知り、良い状態が続くよう努める。 

 

 第六条:心に等しい未来

  今の心の状態が先の状態と知り、全てに感謝し喜び明るい心で過ごす。

 

 第七条:向上心を持て

  決してうぬぼれず諦めないで、常に向上していく。

 

 第八条:全て己にあり

  全て己に因が有ることを知り、努めて平和人として生きる。

 

 第九条:心が体を支配する

  常に良い心で過ごし、心身共に健康で過ごす。

 

 第十条:生きる為に夢を持て

  夢や希望を持ち、その実現の為に楽しんで行動する。


 「雄介、これを参考にして地球を平和の星にしていくんだ」

 「分かったよアロン。頑張ってやってみるよ」


 「雄介、僕は一旦アンドロメダ星に帰ってくるよ」

 「何だって。君は全力で協力するって言ったじゃないか。これから本格的にアロンに助けてもらわないと、プレゼンの用意ができなよ。なんで急にアンドロメダ星に帰るんだよ」雄介はアロンの言葉に驚いた。


 「そんなに心配するなよ。僕が地球を離れても連絡が取れるように、雄介のパソコンに連絡を入れるから大丈夫だよ。アンドロメダに帰って太陽の爆発が早まってきているから、もっと早く宇宙船団を地球に派遣してもらえるよう交渉してくる為に帰るんだよ」


 「そうなんだ。アンドロメダ宇宙船団の役割は重要だよね。宇宙船団が地球にやって来ないと、地球人は地球が直面している問題に気が付かないだろうからね。分かったよアロン、気を付けて帰ってきてくれよ」


 

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