3,宇宙法則(2)
次の日、アロンはアンドロメダ星に帰ってしまった。一人になった雄介は、なんだか心細くなったが、プレゼンの制作に毎日頑張って取り組んだ。そして学校の勉強もアロンが教えてくれた宇宙法則も、毎日の生活に取り入れて頑張った。アロンが帰ってしまってから一か月程が経ったある日、突然雄介のパソコンからアロンの声が聞こえた。
「雄介、聞こえますか。こちらはアンドロメダ星のアロンです」
「アロン。僕だよ、雄介だよ。久しぶりじゃないか。元気かい」
「雄介、その後プレゼンの準備はどうだい。順調かい」
「アロン、そのことで一つ相談があるんだ。四苦八苦しながら頑張って作っているんだけど、どうも一人で考えていても不安だから、僕が入っている天文クラブの友達二人に相談して、友達に協力してもらおうと思うんだけどどう思う」
「うん、いいんじゃないの。信頼できる友達なら大丈夫だ。雄介も一人だと不安だよな」
「ありがとう。学校で一番仲のいい友達だし信頼できる友人だから心配ないよ」
雄介は、友達に協力してもらうことを、アロンが了承してくれたのでとても嬉しかった。
「ところでアロン、そっちはどうなんだい。宇宙船団はどうなった」
「そうだな宇宙船団の方は順調だけど、雄介に一つ悪い知らせがある。我がアンドロメダ星の調べでは、地球が回っている太陽の異常は、普段の太陽活動と比べてもの凄く異常で、原因がはっきりしないんだ。
普通の恒星爆発の原因は三種類有って、一つは恒星自体の寿命がきて爆発するものと、太陽の重力が乱れて爆発を起こすものと、あとは太陽の核融合反応の乱れによるものがあるんだ。太陽の寿命はまだきていないから、重力の異常か核融合の乱れが原因していると思われるんだが、まだはっきりとした原因が分からないんだ。原因が分からないと対策方法も分からないから、今はまだ調査中なんだ」
「じゃあギャラクシーユニオンの力を借りたとしても、太陽爆発を回避することができないのかい」
「今スタッフが頑張って調査しているから、もう少し待ってくれ。太陽爆発回避の方法は我がアンドロメダ星のスタッフに任せてくれ。必ず原因を調べて良い対策方法を見つけるから。それより雄介は、地球を一つにまとめて地球がギャラクシーユニオンに加入することに集中するんだ」
「そうだね。僕はまず地球を一つにまとめることに集中しないといけないね。地球がギャラクシーユニオンに加入できないと元も子もないよね」
「そうだ、その調子だ雄介。宇宙船団の方は順調だから安心してくれ。1年後には地球に宇宙船団を派遣できそうだ。宇宙船団は100隻位で行くようになると思うよ。一番大きな宇宙船は全長100キロ程ある。全長100キロの宇宙船は1隻だけで、後は長さ10キロ程の宇宙船だ」
「それはびっくりするよ。それで地球に宇宙船団は、どんな感じで飛来するつもりなんだい」
「いきなり世界中の空に宇宙船団が飛来する計画だよ。地球人が相当びっくりすると思うよ。そらから僕が世界中にメッセージを届けるよ。天野雄介を地球人代表として交渉させるようにね。そして君の口から世界中に伝えるんだ。地球に滅亡の危機が近づいてきていることをね」
雄介は、地球のために遠い星のアンドロメダ星の人々が助けになってくれて、本当に嬉しいと思った。
次の日、雄介は一緒に天文クラブに入っている同級生で、唯一仲の良い秋山良太(あきやまりょうた)と、木下由香里(きのしたゆかり)に声を掛け学校帰りに家に呼んだ。雄介の部屋に通された二人が雄介に聞いた。
「相談って何だよ、雄介」
「そうよ、改まって雄介君らしくないわね」
急に雄介が真剣な顔で声を掛けたので、二人は不思議がっている。
「実は、君達に黙っていたことが有るんだけど、僕一人ではどうも不安だから、協力してもらいたいことがあるんだ」
雄介はそれから二人にアロンとの出会いから、地球が近く直面する滅亡の危機について、そして、その危機を逃れる為には地球がギャラクシーユニオンに加入しなければならないこと、加入に際してプレゼンテーションを雄介がやらなければならないことなどを説明した。
「雄介、冗談は止めてくれよ。雄介が宇宙のことが大好きなのは知っているけど、そこまで思いを巡らせてどうするんだよ」
「雄介君が嘘言っているとは思わないけど、いまの話を証明する物は何かあるの、それが無いといきなりそんな話されても信用できない」
雄介は二人の言葉に腕組みをして考えた。
「そうだよな、僕の話だけでは信用できないよな。アロンはいまアンドロメダに帰っているし、困ったな。あ、そうだ」雄介は立ち上がってアロンからプレゼントされた、スペーススーツのコントローラーと翻訳機を二人に見せた。
「これがアロンからプレゼントされた、スペーススーツのコントローラーと、全ての宇宙語が自動で翻訳される翻訳機なんだ」
二人は不思議そうにそれらを手に取り眺めた。
「じゃあ、まずこのスペーススーツを着てみるよ」雄介は立ち上がって服を脱ぎだした。
「キャー、ちょっと雄介君」
「ごめん、由香里はちょっと後ろを向いていて」雄介はパンツ一丁になってコントローラーを左腕に付けた。
「えっと、確かこのスイッチだったな」雄介がコントローラーの赤いスイッチを押すと一瞬にしてスペーススーツが雄介の全身を包んだ。
「おー凄い」雄介と良太が驚いた。
「由香里、こっちを向いていいよ」
「雄介君、なんだかダサいスーツね」
「まあ、見ておいて」雄介はコントローラーのスイッチを押しながら「赤色」と言った。するとスペーススーツは赤色に変わった。
「おー」三人とも驚いた。
「次は青色」するとまた一瞬にして青色に変わった。
「凄いわね」由香里が驚いている。
「良太、そこの僕の鞄を思いっきり僕に投げつけてみてくれ」
「大丈夫なのか」良太は雄介の鞄を手に持ち雄介に投げつけた。
鞄は雄介のお腹の辺りにぶつかったが、雄介はびくともせずなんともない表情だ。
「凄いよこれは、なんの衝撃もないよ」それを見ていた二人も驚いた。
「翻訳機も試してみよう」雄介はパソコンを取り出しユーチューブで、英語で話す映像を流してみた。雄介は二人に翻訳機を一つずつ渡し耳に付けさせた。
「ちゃんと翻訳しているよ」良太が驚いた。
「雄介君、中国語も掛けてみて」
雄介が今度は中国語で話す映像を流した。
「これもちゃんと訳しているわ」由香里も感激している。
「二人ともこれで僕が言ったことを信用してくれたかい」
「信用するよ。じゃあプレゼンの用意を早急に完成させないといけないんだね」
「雄介君、私達に手伝えることは言ってね」
「ありがとう。ほんと助かるよ。誰かに見てもらわないと一人じゃちゃんとできているのか、何処を改善すればよいのか全然見当が付かなかったんだ」
雄介は二人の協力を得られてとても安心した思いだった。そして三人で試行錯誤を繰り返し、アロンにも助言を貰いながら、やっとの思いでプレゼンテーションの準備が完成した。
それからあっと言う間に1年が経ち、ついにその日がやってきた。アロン率いるアンドロメダ星の100隻を超える宇宙船団が、地球の主な都市の上空に一斉に飛来したのだ。世界中の人々が驚いたのは言うまでもない。最初は地球が襲われるのだと、ほとんどの人が思った。しかし直ぐに宇宙船団からのメッセージが地球に届いた。メッセージは、世界中のテレビやラジオ、インターネットの電波をジャックして、一斉にアロンが現れて話した。
「地球人の皆さん。我々は、アンドロメダ銀河にあるアンドロメダ星からやって来ました。我々はギャラクシーユニオンと言う連合に加入している者で、その連合を代表して来たのです。我々が地球にやって来た目的は、将来地球に訪れる地球滅亡の危機を回避させる為です。しかし地球滅亡の危機を回避する為には、我々のギャラクシーユニオンに地球も加入する必要があります。そしてギャラクシーユニオンに加入するためにはいくつかの条件があります。
条件1、地球が争いの無い平和な星であること。
条件2、地球人同士が助け合い、協力し合い、いたわり合うこと。
条件3、地球が愛に満ち溢れた幸せな星であること。
条件4、地球の全ての人が、他の星人と友好的であること。
条件5、日本の大阪に住んでいる天野雄介が、地球人代表としてギャラクシーユニオンと交渉すること」
このアロンのメッセージが発信されると、世界中のメディアが雄介のことを探し始めた。アロンのメッセージを聞いて雄介の家族も驚いた。雄介は驚いている家族を前に、初めて両親と妹に今までのいきさつを打ち明けた。雄介の家族は雄介の話を聞いて心配したが、地球の為に雄介がやるしかないのだと納得した。そしてアロンが雄介を直ぐに迎えに来た。アロンの乗ったシップにはソニヤも一緒に乗っていた。
「雄介さんお久しぶり。元気でしたか」そう言ってソニヤが雄介に近づきハグした。
「雄介、これからが忙しくなるね」
「そうだね、アロン。色々と教えてくれよ」
「ところで雄介さん。ギャラクシーユニオンにプレゼンする原稿はできたの」
「はい、友人二人に手伝ってもらってなんとか完成しました。練習がてらアロンとソニヤさんに聞いてもらおうと思っています」
「分かったわ。雄介さん楽しみにしておくわね」
「雄介、君は連合にプレゼンする前に地球人にメッセージを届けないといけないよ」
「そうだねアロン。地球を平和にして愛に満ち溢れた星にするためだろう。そうなると思って、それもちゃんと準備してあるよ」
雄介は、自身ありげに親指を立てた。そして雄介は、地球人に向けたメッセージを二人の前で話した。
「地球の皆さん。私は天野雄介と申します。先日アンドロメダ星から来た友人から紹介された者です。皆さんはなぜ私が地球人代表に指名されたのか、不思議に思われたことでしょう。しかし私は、アンドロメダ星の友人とは一年以上も前に知り合い、そして今日のために準備をしてまいりました。
もう皆さんは、アンドロメダ星から来た宇宙船団を見てお気付きでしょう。この宇宙には、私達地球人には想像も付かない程の技術力が存在していることを。その技術力を持った友人が私に教えてくれたのです。地球に滅亡の危機が迫っているのだと。しかし皆さん慌てないで下さい。その地球滅亡の危機から逃れる方法も彼が教えてくれました。それが彼からのメッセージに有ったように、地球が平和で愛に満ち溢れた星になることなのです。
そして地球がそのような星になって、初めてギャラクシーユニオンと言う連合に入会できる権利を得るのです。そうなった上で私が連合総会に出席し、連合加入の為のプレゼンテーションを行います。そして地球が連合への加入が認められたら、ギャラクシーユニオンから地球滅亡の阻止に向けて力を貸して頂けるのです。
いいですか皆さん。地球滅亡から逃れるためには、まず地球の全ての人が協力して、平和で愛に満ち溢れた星になる必要があるのです。皆さん、もう時間がありません。今あなたの一番近くにいる人を心から好きになって下さい。そしてあなたの知り合いの人、あなたがこれから出会う人、全ての人を好きになって下さい。
人を好きになるだけで良いのです。世界中の人が自分の身近な人や知り合いの人を好きになることで、地球が平和で愛に満ち溢れた星になるのです。自分のために、そしてあなたが愛している大切な人のために、さあ今から始めましょう。もう時間がありません」
このメッセージがそのまま世界中に配信された。その後、間もなくしてアメリカのナサから、2年後に太陽が大爆発を起こすかも知れないと世界中に報道された。そして初めて世界中の人々が平和を訴えて行動を始めたのだ。
雄介から宇宙法則十カ条も発表された。その十カ条は世界中の言葉に訳され、それをカードにして世界中に配られた。世界中の人々が、その法則を生活に取り入れていった。そして地球は、世界平和に一歩ずつ近づいていったのだった。
宇宙法則十カ条
地球を守る為に、幸せに生きていく為に、この法則を実行し平和人として生きよう。
第一条 心が全ての根源である
第二条 同質が集結する
第三条 全てはバランスを保っている
第四条 執着しない
第五条 全てが必然
第六条 心に等しい未来
第七条 向上心を持て
第八条 全て己にあり
第九条 心が体を支配する
第十条 生きる為に夢を持て
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます