【パート2】何から始めるかな。

ガタガタッ──。

ダンボール箱を蹴飛ばしながら、部屋に押し込んだ。


6畳に満たない、古ぼけた部屋。

黄ばんだ壁紙、たわんだ天井、カタカタと不規則に鳴る換気扇。

夜10時を過ぎ、小さな窓の外はすっかり暗くなっている。


「──おいおい、分っかりやすいなぁ。」


かなめ 浩介こうすけは、異動先の執務室で頭をかきながら小さく笑った。


新宿警察署・繁華街治安対策室。


看板こそ立派に掲げられているが──これじゃどう見ても左遷先だ。


机にあるのは、辞令と封筒が1通、それと110番ひゃくとおばん日報にっぽう(*前日の通報で処理された事件の一覧表)。

──とりあえず刑事課の応援でもしとけってことか。


「……マジで転職したくなるぜ。」


まぁ、そうは言っても──今回はどう転ぶかも分からない、異例の施策だ。


体裁なんかどうでもいい。

ここから始めるんだ。


段ボールを無造作に積み上げ、錆びたパイプ椅子に腰を下ろす。

封筒を開き、朱色の「決裁」印を確認する──要の口角がわずかに上がった。


──予算は、通った。


「さてと……何から始めるかな。」


その時だった。


廊下の奥から甲高い若者の声が跳ね返ってきた。


「本当だって! 聞こえたんだってば!」


「はいはい、わかったから。」

若い制服の警官が、あしらう声。


「だからね、ずっといられても困るんですよぉ。」

振り返ると、もう長いこと聞いているのか、もう一人の中年の警察官は受付に頬杖をついている。


要は一度は興味なさそうに顔を背けた。


……が。


「男、三人で……リサイクルショップ……ブランド品……。」


単語が耳に引っかかった。


──ん?


昨日の110番日報──これだ。


リサイクルショップの出店でみせあらし,被害品はゲーム機とブランドのバッグ。


「………………。」


要は、ギシリと椅子の背もたれから体を前に起こし、ゆっくりと立ち上がった。


「──まあ、とりあえずは、おとなしく“刑事の手伝い”でもしておくか。」


微かに口の端に笑みを浮かべた後、ポケットに手を突っ込んだまま、気だるそうに廊下へ向かう。

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