第2話 リルの一家

 リルの一家は、父エリーと、母のカーナ、犬のケリの三人と一匹の家族構成だ。一家で、青い屋根に白い木の壁の、村で一番小さな二階建ての家に住んでいる。


 エリーの仕事は建設業で、一家の大黒柱として日々働いている。

 母のカーナとは、恋愛結婚だったらしい。カーナは、若いころ綺麗で豪快な性格だったらしいが、男前だが少し繊細なところのあったエリーから告白されて付き合い始め、やがてリルを授かり結婚したといういきさつを、近所のマリーおばさんから聞いたことがある。


 エリーとカーナは仲が良い。気が強く怒りっぽい面もあるカーナを、優しいエリーがよく支えてうまくやっていた。ケリは、リルが6歳の時に近所の家で生まれた子犬を見て、一目ぼれをして家に連れて帰った。相談もない勝手な行動にカーナは怒った。しかしエリーは、「リルには、この子が必要だ。俺にはわかる」と説得してくれた。こうしてケリは晴れてうちの家族の仲間となった。


 その子犬に「ケリ」と名付けたのはリルだった。

 リルは、ケリに絶大な信頼を寄せていて、何か相談事や本心は、両親よりも先に、ケリに聞いてもらっていた。ケリは、いつも真面目な顔をして話を聞いてくれるので、普通だと言いにくいことも素直に伝えることができた。ふんふんと呼吸しながらまっすぐ見つめてくるケリを見ていると、なんだかリルは自然に笑顔になることができたし、考えを前に進めることができたのだ。


 リルの一番の悩み事は、母カーナが幼いころから厳しすぎることだった。

 何かにつけて禁止事項が多く、リルは常に叱られていた。カーナ自身は、リルの父親であるエリーによく話を聞いてもらい気持ちを落ち着かせていた。その話とは、大体にしてリルがしっかりしていないという内容のようだった。リルは、カーナがうらやましかった。


「ケリ、今日もカーナに怒られた。何が悪いの?わたしがぼーとしているからかな」

 

 ケリは、「ちがうよ」というように、首を横に振る。


「ケリはそう思うの?わたしは、わたしよりもケリの方が、頭がいいと思うから信じてみる」


 ケリの横腹につっぷしたまま、いつも眠りについてしまう。そうして見る夢は、いつかも見た夢と同じ設定の世界だった。

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