568年前 2

その日、セルフィが勝ったことを記される新聞が配られた

セルフィは傲慢の剣士と言われる前までは人気者だった

そのためか、『傲慢の剣士セルフィ』これを知らないものはほとんどおらず、

セルフィを敬う者も少ないと言って良いだろう


だが、逆に考えるとその少ない者が噂を知っておらず、敬う者も多少いる

ということになってくる

だからこそ、新聞はいい意味でも、悪い意味でも評判だったのだ

セルフィはそれでも、自分が人気者だと信じ込んだ。

国民からセルフィへの好感度をセルフィは全く知らなかったからだ


「そこのお嬢さん...私に..その肉をくれないかい....?お願いだよ...」

「は、?」

セルフィは吐き捨てるように言葉を投げた

その日は、セルフィが自分で武術大会で優勝したためのご褒美を買いに行っている時だった。セルフィは自分のお金で国内一番で人気の屋台専門店、一流シェフが作ったA5ランクのお肉を食べ歩きしていた

見窄らしい格好をした老婆はそれはそれは痩せ細っていたため、セルフィが持っていたお肉をくれ、と申し込んだのだ

だが、傲慢の剣士セルフィはその申し込みを断った。

あげる義理がないから、と

「あんた何言ってんの?私があんたにあげる義理なんかないでしょ?

何で私があんたにあげなくちゃいけないのよ?私が自分で買った肉よ?

あんたなんかそこらへんの土でも食べとけばいいのよっ!!」

「本当に本当にお願いだよ...お腹が減っているんだよ...

そこのお肉をくれるだけでいいから...ねぇ...簡単だろう...?」

老婆はセルフィの足にしがみついた

そしてセルフィはそれを強引に振り払った

そしてこう言った___

「私に近づかないでっ!!!汚い..汚いわ!!あんたがしがみついた足、腐ったらどうするわけ?!そもそも、私のこと知らないでしょ?

私は天才で国内一番の武術を持っている剣士なんだから!王族に仕えてるの!

その私にあんたは食料を分けてください、なんて侮辱だわ!侮辱よ!

王族に仕えてる私があんたを直々に殺してあげる!感謝しなさい!」

「________ふぅん..あなたそんな性格だったのね...

見損なったわ...」

「え、?」


老婆だった者はキラキラと眩い光に包まれながらそういった

その光が消えた時、老婆は王妃へと変わっていたのだ

「お...王妃様...?」

「そうよ。私は王妃、フェルツェリア・ピアール・リアース よ!

私の国民にあなたは何をしようとしたか、分かっていらっしゃるかしら?」

「え...え..」

セルフィは現実を受け止めきれずにいた

王妃へと変貌したからではない、さっきの愚行を王妃に見られた...

王妃にしてしまったからだ

その瞬間、セルフィはこれが現実であると認識した

「お..王妃様、!先程のご無礼をお許しください!私は...ただ王族への名誉をお守りしていただけなのです!!」

「ほぅ?愚かな剣士セルフィよ、私の認識を解いて見せなさい!」

「は..はい!私はなぜ先程の言葉を仰ったかと申しますと、王様にも言いましたとおり、私が仕えているのは王族の皆様方!

私が今、食料を与えなかったのは、王族の皆様の為...!

先程、私があげていましたら、優しいという声は拾えるでしょう

ですが..貴族の皆様はこう認識します。

「王族はなんと簡単なものなのだろう」と

私は王族に仕える身!私が渡してしまうと王族もそうなのだと誤認識されてしまわれます!そのため、私h___」

「バカな者だわ!そんなことを貴族全員が思うはずではないでしょう!

そんなはっちゃらけた思考をお持ちのようなら、今すぐこの国から出てってちょうだい!」

「な__なぜ?!理由をお聞かせください!」

「そうね、あなたは私たち王族を侮辱したわ。王族はそんなバカな思考は持っていない!少なくとも、王以外は、」

「...!!(でも王様はそうなんじゃん...)」

「それに..他の貴族もそのような発言、思考はしないでしょう!

そのような思考を持っていると、後々痛い目を見る、貴族共々分かっていらっしゃるわ!」

「...___」

「分かってくれたかしら?あなたは正式に、ここからまもなく追い出されるでしょう。他の国に武術を披露しようと思っても無駄ですよ。あなたのその膨大な魔力は直に封印されます。国の繁栄のために!」

「ぁ...あぁ...あぁぁぁぁ!!!!わたしはなにもわるくない!!わたしはぁあああ!!」



「ふん...自爆したか...でも、よくある展開すぎて何も面白くないな。

少し細工するか___」

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