568年前 1

さて、この物語が終わったのは約600年前と言われている

この600年の間に何が起こったかこれから紹介していこう__


この一年で世界は出来上がった

大天使フェテーゼと邪神ルーリアによって生み出されたのが、『フェルトリア』という名前の世界だ。

大天使と邪神が協力することにより、膨大な土地と海が存在する、『フェルトリア』が生まれたのである

この世界では魔力が存在し、様々な種族や、魔物が存在する

ほとんどの人が使える中で、種族で使えない者もいたり、人間の中で稀に使えない人も存在している。これを『劣等人』と呼ぶ


だが、このフェルトリアを作った邪神ルーリアは突然、破滅し、死んでしまう。

これが世界を作った時に起こった、新たな第一歩 となる


568年前 フェルトリアが完成した頃から32年後


種族の中の1人 悪魔 ローランは人間を見るのが好きだった。

それゆえ、誰にも気づかれず『鑑賞すること』を身につけた。

ローランは有名な悪魔だったが、ローランに関する情報は滅多にないのだという。

『女性か、男性か』『何歳なのか』など様々な疑問に包まれている

しかも、ローランはある時ある時で声や、喋り方を変えるのだ

そこから生み出されたのが、『守神ローラン』という名だ。


今日もローランは誰かを鑑賞しているようだ。

見に行ってみようではないか。


カキンッ!カキンッ!

剣の弾く音が会場内に響き渡る

そう、これは武術大会だ。

ローランが今注目しているのが、『傲慢の剣士セルフィ』だ

女ながらも国内最高の武術の才を持つ天才剣士。

なぜ、そんな人が傲慢の剣士と呼ばれているのには理由がある

名前の通り、『傲慢』なのだ。

傲慢という事実が生まれたのは、ある出来事によることだった


ダンっ

お酒を入れたコップに振動が響く

「ねぇ、もっとお酒を持ってきてちょうだい!早く!」

「は、はいっ!」

この店の店主が震えた声で言う


ここは王城があるすぐ近くのお店『テルッシュ酒場』だ

若者が馴染みやすいと人気で評判なのだ。

ここの鉄板メニューも大人気で、王様に取り寄せられているくらいの人気ぶりだ。

今日も酒場は混み合っているが、セルフィの周りだけ、人が少ないように思う

セルフィは避けられているのだ。人々から。

セルフィの噂はほんのりと国民に行き渡っていたからだ。

だから人々はセルフィは傲慢、と認識している


「ねぇ早く!聞こえないの!!?は〜や〜くっ!ヒックっ!」

「す、すみません!少々お待ちくださいっ!」

休日の影響で酒場は、平日よりも多く人が集まっていたため、お酒を用意することが難しくなってきていた。

「ちょっと人が多いからって手を抜いてんじゃないわよ?!もし3分以内に料理と酒を提供できなかったら...どうなるか分かってんじゃないでしょうねぇ?!!ヒック」

「ヒィぃぃ....!!!す、すぐお持ちしますからっ!!」

ザワザワ...ザワザワ...

来ていたお客さんたちに傲慢と言う噂が本当なのだ、と思い知らされることになった

「ど、どうぞぉ!!」

息切れした声ではぁはぁと料理を持ってきた店主がいた

「ふ〜ん...あ!こんな所に髪の毛が入ってるぅ〜!!ねぇ、どう言うこと?ヒック」

「ぁ、え?!」

店主がアワアワしているのがわかる

「も、申し訳ございません!ちゃんと確認をしておりませんでした!ど、どうか命だけは...!!!」

「謝るんだったらぁ〜命はいらないからっ今日のご飯代無料にしてよっ!ね、それくらい、いいでしょ?...ヒック」

謝ったことに漬け込んで、セルフィは代金を無料にしようとした。

「へ...?ぁ、え?」

店主もびっくりしている

「は、h______」


「ちょっと!それはないんじゃないの?!」

店主が頷こうとした瞬間、パン屋のおばさんが口を挟んだ

このパン屋のおばさんは大人気メニューの必需品のパンを提供している

「は?このセルフィ様に楯突こうってわけ?私が正しくないって言いたいわけぇ?!いい度胸じゃないッ?!!殺してあげるッッ!!!??.....ヒック」

「あなたねぇ、このメニューが食べられなくなってもいいの?それに、国内最高なくせに私なんかにその剣を振っていいのかな、よく考えたら分かることよ!」

「ッッいい度胸してるじゃないッッッその首、切ってあげるわッッッッッッ!!!!....ヒック」


ズシャッッッッ!!

言葉だけだと思っていたパン屋のおばさんが本当に首を切られてしまった

この酒場の店主も本当にびっくりしている様子がわかる

「あはっ!ばかね...バカだわ...本当にバカ!!まんまと切られてや〜んの!

バカだなぁ...あはははッッッ!....ヒック」


この日、セルフィは捕まった。なんの罪もない人を斬ったからだ

「この剣は国民と、国のためにあるべきものだと教えたはずじゃ」

「発言許可をください、私は何も悪いことはしておりません!閣下!」

「うむ、許そう。儂からお主への誤解を解いて見せてみよ。だが、お主は罪人ではない人を斬った、これが何たる証拠じゃ。ここからどうするつもりかの?」

「いいえ、閣下。閣下は間違っております。私は罪を犯してはいないのです!この者が私を侮辱したのです!私は国内でも随一の剣士。その私に侮辱したのですよ?!

私を侮辱すると言うことはつまり、私がお守りする閣下への侮辱!ということになるのです!!私のした行動は間違っておられるのでしょうか...閣下...?」

「......う、うむ。そうじゃの、お主は間違ってはおらぬ。罪を犯したのはお前ではなく、この者だ!この者の首は、細切れにして犬の餌にでもしてやれぃ!!!」

この王様は美女に弱かった。セルフィは傲慢ではあるが、誰しもが認める美女だったため、甘やかされて育ってきた。これが間違った教育なのだ。


ということがあり、ほとんどの国民からセルフィは嫌われており、傲慢と恐れられている。


カキンッ!ギンッッッ!

ついに勝者が決まった、傲慢の剣士セルフィだ

コツコツ...コツコツ...

足音が響く


「ローラン。久しぶり、元気にしてました?」

「...やぁ。久しぶりだね。サファイヤ」

赤い髪にサファイヤのような目をした女性がローランに話しかけてきた


「その呼び名はやめてくれる?その呼び名にはいい思い出がないの、知ってるでしょ?」

「ん、あぁ。そうだったね。確かにいい思い出はないと思うな、サファイヤ」

「だからやめて、本当に、お願いするわよ?」

「あぁ。分かったよ」

ローランとサファイヤという女性は淡々と会話を進めていく


「そういえば、今日はその口調なのね。ローラン君」

「君...せめてさんにしてくれ、子供っぽいったらありゃしない」

「仕返しよ。で、今日のお目当ては?」

「お目当て...ま、今日は傲慢の剣士セルフィかな。最近噂になってるんでね」

「鑑賞好きよね...あなた。異常なくらい」

「俺にとって鑑賞が人生だからな。ないと死ぬさ」

「本当に異常だわ。私、あなたがこれ好きってことしか分からないのに」

「個人情報をわざわざ教える必要はないさ。ルーシャ?」

「あら、ローラン君どうしたのかしら?」

「ふっ...茶番が過ぎるな..お前、昔は俺のこと追っかけ回してたくせに」

「あら、今も変わってないわよ?」

「え、本当に...?引くって...」

「ちょっと!本当に引いてるの?やめてもらっていいかしら?あなたも茶番が過ぎるわね」

「ハハハ、嘘だよ。でも、追っかけ回してたっていうのは本当だろう?」

「まぁね...あの時はあなたに興味があったからねぇ...今もそうっちゃそうだもの

で、あなたは何が見たいの?」

「え、まぁ...破滅するとこかな。てか破滅しかないだろう」

「破滅って...まぁそうかしらね?

あら、そろそろ時間だわ、また会いましょう?守神ローランさん?」

「あぁ、96番ルーシャ。また会おう」


そうしてルーシャは風のように姿を消した

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