ポケットから取り出した紙片に、なんとなく目を通すマコト。

 レオナは、そのタブロイド判の紙面に目をやり、短く吐息して肩をすくめる。

 それは昭和風味の

 「エリー7」というタイトルで、煽情的な記事が躍っている。


「座ると妊娠する椅子、か。こわいこわい」


 昭和某日、男子禁制の学内で生徒が妊娠するという不祥事が起こった。教師たちは当該生徒を椅子に座らせ、何時間も問い詰めた。

 気づくと椅子は真っ赤に染まり、赤ん坊と少女は息を引き取った。

 学校側は事態を隠蔽するため事故として報告。その後、その椅子に座った少女が妊娠するという怪異が起こりはじめる──。


 一抹の真実のカケラを核に、多分の虚偽を交えたこの手の煽情記事が、セント・エリーの「7ふしぎ」として列挙されている。

 記事を編集した新聞部の少女たちは罰を受けたらしいが、内容は無限コピーされて校内に流布している。

 ちなみに現在、これを折りたたんで財布に入れておくと、生理が軽くなるらしい。


「……そういう迷信を信じるのはおやめなさい、ばかばかしい」


「ははは、せっかくミュウがくれたし、気休めくらいにはなるだろ」


 この7ふしぎのなかに、ピンコロリン遺跡の謎、という考古学ミステリーも含まれている。さきほどミュウたちがもぐっていった、地下の石組み遺構だ。

 古代の埋葬地だった可能性はあるが、基本的には田んぼの排水溝として用いられた、というもっともらしい表向きの説明書に疑う余地は少ない。


 いっぽうタブロイド記者は、姥捨山の代わりに使われた時期がある、無数の女の怨念が取り憑いている、といったエピソードのほうを好んで採用したがる。

 編み棒で藁人形を突き刺す、という派生エピソードについても、検証してくれるだろう人物が……。


「ん? どうやら、もどってきたみたいだぞ」


 2階の窓から見下ろしてつぶやくマコトの視線のさき、ほうほうのていで引き返してくるチエとミュウの姿。

 マコトの肩越しに見下ろしたレオナは、冷たい口調で、


「どうやら生きていたようですね。残念ながら」


 生還者を迎え、うわさの真相を問いただすくらいの時間は、放課後という枠内で処理できそうだ。


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