黒岩 信(くろいわ・しん)

[log] 1965/08/12 02:20:00

誕生。千葉県木更津市。

父は酒屋、母は無口。

「将来は酒屋継ぐのか?」と親戚に言われ、うなずいて育った。


> assign.name: 黒岩 信

> childhood.env: 酒と沈黙


[log] 1991/05/04 20:10:00

職場の付き合い酒。

「強いなあ」と言われるのがうれしかった。

誰にも怒られないのが、酒だけだった。


> frequency: daily

> dose: increasing


[log] 1998/09/02 02:50:00

初めて手が震える。

朝一番に缶チューハイ。

それでも仕事は行った。「使えなくはない」と上司は言った。


> symptom: early

> insight: absent


[log] 2005/07/19 16:00:00

妻、実家に戻る。

「酒を取るか家族を取るか決めて」

選べなかった。

ただ飲んで、寝て、吐いた。


> spouse: departed

> child.visits: discontinued


[log] 2011/03/29 09:40:00

救急搬送。肝臓値、警告ライン。

病院からの帰りに、自販機で缶ビールを買った。

それが“敗北”だということは、わかっていた。


> diagnosis: alcoholic.hepatitis

> compliance: none


[log] 2015/12/01 10:00:00

保健所の勧告。

「ご家族の同意があれば、措置入院の形も…」

その言葉通り、**鍵のかかる病棟**に運ばれた。


> entry.type: forced

> family.contact: void


[log] 2016/03/22 15:18:00

白い壁、決まった時間の食事、プラスチックのカップ。

「名前は黒岩さんでいいですか?」と聞かれ、

「それ以外、何があるんだよ」と笑った。

誰も笑わなかった。


> surroundings: sterile

> craving: intact


[log] 2017/07/08 19:30:00

少しずつ、飲みたい気持ちは薄れていく。

でも、**“何も欲しくない”気持ちが濃くなった。**

リハビリの冊子だけがめくられずに積まれていく。


> status: dry but numb

> memory: foggy


[log] 2024/04/21 11:00:00

息子の名前を忘れかけた。

病棟の窓は、開かない。

でも、空の色だけは、まだ知っていた。


> progress: arrested

> longing: background.noise


[log] 最終出力:

「酒はやめられた。

 でも、自分を戻す場所が、どこにもなかった。」


> power.on

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