大西 清志(おおにし・きよし)

[log] 1920/10/10 06:45:00

大分の農家にて出生。兄がひとり。

冬の朝、泣き声に湯気がまじった。


> assign name: 大西 清志

> register: 戸籍甲第五号


[log] 1927/04/01 08:10:23

小学校入学。草履で歩く土の道。

九九をなかなか覚えられなかった。


> education.begin

> emotion: 恥ずかしさ + 素直さ


[log] 1934/09/18 15:43:12

父の腰が悪くなる。

田んぼの手伝いで背筋を痛める日々。


> duty: 肉体労働

> dream: 凍結中


[log] 1938/03/20 10:00:00

徴兵検査。「甲種合格」

母が小さく震えた背中でお茶をすする。


> system: 軍籍登録完了

> status: 国民ノ務メ


[log] 1940/05/01 07:22:44

広島連隊配属。「清志、体だけは大事に」と兄から手紙。

腕に名前を書いた布切れを縫い付けた。


> deploy: basic training

> morale: 初期値


[log] 1941/12/08 12:00:00

戦端開く。南方派遣の命令。

汽車の窓から見えた母の姿が、最後になった。


> destination: 未記録地(機密)

> internal log: silent


[log] 1942/07/03 05:15:32

湿ったジャングル。

銃が重い。蚊が止まらない。友の声だけが頼り。


> food.supply: 欠乏中

> sleep.cycle: 分断


[log] 1943/01/09 18:21:59

村落で銃声。命令は「火ヲ放テ」

終わってから手が震えて止まらなかった。


> action: executed

> conscience: active (未報告)


[log] 1944/10/30 03:42:10

爆撃。陣地壊滅。友人の中田戦死。

夜中、名前を呼んでしまい、叱られた。


> connection.loss("nakata")

> memory.save("笑顔")


[log] 1945/02/22 11:13:59

飢え。食料なし。

壕の中で日記を書いた。破れた帳面の裏に、ただ一行。


> write:「家へ帰りたい」

> save = 地面の下、密閉


[log] 1945/03/05 06:04:33

敵機上空。

清志は、頭を上げる間もなく吹き飛ばされた。


> terminate_process()

> cause: 爆風による即死

> remains: 不明


[log] 1945/08/15 12:00:00

※通信記録なし

※既に清志は存在していなかった


> archive status: 戦没

> file: 残留記録なし


[log] 後年、弟が靖国に名を見つける。

「兄ちゃん、あんた、ちゃんとおったんやな」

誰も語らなかった戦死のログ、そこにあった。


> log.save("/history/hidden_soldier_kiyoshi.log")

> final message: [静かに消えた、でも消えていない]


> power.off

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