久保 正義(くぼ・まさよし)
[log] 1960/01/22 03:07:11
誕生。団地の一室、寒い朝。
父は名付けに「正義」と書いた。意味は聞いていない。
> register.birth
> assign name: 久保 正義
[log] 1975/06/08 14:32:54
高校の進路調査。
「普通でいい」と書いたが、担任に赤で線を引かれた。
> goal.undecided
> output: silence
[log] 1983/10/03 18:50:02
最初の就職。倉庫。フォークリフトの音。
同期の田中とラーメンを食いに行ったのが嬉しかった。
> start routine: work.repeat()
> system note: no complaints logged
[log] 1997/02/21 23:12:00
妻が出ていく。息子の手を引いていた。
何も言わなかった。言えなかった。
> connection.terminate("家族")
> data loss confirmed
[log] 2003/11/30 10:02:10
会社が倒産。失業保険の手続きに行きそびれる。
「そのうち何とか」と思っていた。
> trigger: coping_mechanism
> status: alcohol.increase()
[log] 2007/04/15 17:48:55
アパートを追い出される。
ゴミ袋とリュックだけを持って歩いた。
> location: undefined
> shelter_search: failed
[log] 2011/01/01 00:00:01
公園のベンチ。ひとりで年を越す。
空き缶の音がやけに響いた。
> emotion: muted
> log saved: nobody_called
[log] 2015/05/09 13:24:18
炊き出し。ボランティアの若者が「食べてください」って言った。
「ありがとう」がうまく出てこなかった。
> speech.delay
> gratitude: internal_only
[log] 2019/12/18 04:45:00
凍える夜。ダンボールを重ねる。
新聞の文字がにじんで読めなかった。たぶん、老眼。
> vision.blur
> dignity: still intact (silent)
[log] 2022/07/03 16:00:00
通行人が目を逸らす。「見なかったことにされる」ことに慣れた。
誰かの犬がじゃれついてきて、それだけで嬉しかった。
> touch.impact = +0.95
> memory.create("soft fur")
[log] 2025/02/11 06:33:33
川沿いの草むら。
胸が痛い。息ができない。誰も来ない。
> execute: help_request()
> response: null
> retry: expired
[log] final output:
「誰にも怒らなかった。誰のことも恨まなかった。ただ、寒かった」
[log] power drain detected
> data archived: /unknown/lost.log
> personal name: 久保 正義
> location of death: under a bridge, unnamed river
> status: OFFLINE
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