第5話 背伸びしている二人


「そうだ計典君、今度の試験には連立方程式もあるのよね。

 私、苦手なのよ、ああいうの。」


 採子が遠慮なく話した。


「ああ、2つの式から、2つの値、x,yを求めろってやつだろ?」


 公則君が横から口を出してきた。


「あんたはできるの?」


「……計典、頼むよ。」


「ほら珠奈、あんたもちゃんと聞きなさい。」


「えっと、計典君。

 お願いします。」


「いいよ。

 それで、どの問題に困っているの?」


 連立方程式を解け


 3x+4y=17  ――①

 4x+2y=16  ――②


「これはね、①と②のxとyの数をそろえて、足したり引いたりするんだよ。」


「数合わせをするの?」


「そうだね、それが一番近いかな。

 この場合は、②の式を2倍して……。」


「なんかさ、それだと、相手に会わせて自分が背伸びしているみたいだね。」


 採子の謎解説が始まった。


「ははっ、そうだな。

 俺だっていつも気を引こうと頑張っているもんな。」


「そう? 結構私が気を遣っているのだけどね。

 それがわからないうちは、寄り添えないのよ。」


 公則君と採子は、いつもこんな調子なのかな。

 結構気楽に話ができているじゃない。


「それじゃ、次に行くよ。」


 計典君が新しく方程式を書いていた。


 8x+4y=32  ――③


「この③の式は、②の式を丸ごと2倍にしたんだよ。」


「ふーん。それで、ここからどうするの?」


「今、①の4yと、③の4yが揃っているでしょ?

 だから、この式を並べて、足したり引いたりして、4yをなくした式を作るんだよ。」


「え? どうやるの?」


「同じ数同士、引き算すると、0になるでしょ?

 3-3=0、みたいに。

 この場合は4y-4y=0をつくるんだよ。」


 私は計典君の言うとおりに、二つの式を並べてみた。


 3x+4y=17  ――①

 8x+4y=32  ――③


「ここね、順番は変えてもいいんだよ。

 大きい数から小さい数を引き算すると、マイナスにならなくて済むでしょう?」


   8x+4y=32

 ー)3x+4y=17

 ―――――――――――――

   5x   =15

       x=3


「そう、これよこれ。

 ちょっとした気遣いが、うれしいのよ。」


「そうよね、マイナスとかあると、計算間違いやすいから。」


「お嬢さん、そこ、危ないですよって、紳士に手を引いてもらう感じ?」


「べつに、そんなんじゃないって……。」


 あれ、計典君って……。

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