第6話 気持ちを受け止めて


「さて、x=3ということが分かったね。ここからyを求めていくよ。」


 さっき計典君は『紳士』なんて言われたので、ちょっと声が上ずっていた。


「x=3を、①の式に代入して……。」


「代入するって、なんか告白みたいじゃない?」


「なにそれ?」


 私はそう言う採子の顔を見た。

 それを見て公則君が真顔で採子を見て、


「俺の気持ち(x)は3だぜ。おまえ(y)はどうなんだよ。」


「ぷっ、ちょっとやだぁ。

 数学でナンパしないでよね。」


 しっかり採子も照れていたのを、私は見逃さなかった。


「はいそこ、じゃれていないで問題解くよ。」


「してないもん。」

 

 計典君は呆れていた。


 これを①の式のxに代入するんだよ。


 3×3+4y=17

   9+4y=17

     4y=17-9


「ここ、よく間違えちゃうんだよ。

 なんで9がマイナスになって飛んでいくのよ。」


「ああ、これね。

 左の9を消すために、両辺から9を引いた。

 9を引くってね、―9を足すんだよ。

 4-3は、4+(-3)なんだね。」


 採子が計典君に質問していた。

 同じこと、私が聞きたかったな。


「僕は、闇落ちって言っているよ。

 =をまたぐとマイナスになるんだよ。」


「おい、どこのファンタジー世界だよ。」


 計典君って、ちゃんと『遊んで』いるんだね。

 勉強ばっかりしていると思ったから、ちょっと『ほっ』とした。


「うーん、ややこしいわね。」


「そう、ややこしいけど、式はわかりやすくなったでしょう?」


 4y=17-9

 4y=8

  y=2


 だから、x=3,y=2


「そんなに単純な答えなの?」


 私は計典君にそう言うと、


「ていねいに謎解きをすれば、答えは見えてくるよ。」


「そうよね、両片想いだったって、今証明されたからね。」


 私が採子にそう言うと、すっかり照れていた。

 あら、採子ってかわいい。


「ほら採子、ちゃんと気持ちを代入すると、相手の気持ちがわかるでしょ?」


「あ~もう。

 私が答えを導かれて、どうするのよ。」


「ちゃんとすっきりしたろ?」


 計典君も、公則君をしっかり見逃さなかった。


「その、なんだ。

 今度二人で……。」


 そう公則君が言いかけた途端、採子が、


「テストが終わってからね。

 考えておくわ。」


 だって。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る