人の世界

第27話 人の世界プロローグ~首都、東京~

東京。世界規模でも大都市のひとつ。日本の中心地である。


異変時には開戦当日だったこともあって中央には主要人物が集中していた。


そのため地方では混乱もあったが、逆に俺たちは行動しやすかったのかもしれない。


東京にたどり着いてはっきりとした。


東京は思った以上に静謐を保っていた。死者数は考えたくもないほどに出たのだろうが、街は思った以上に奇麗さを保っている。


寧ろ、雑多に人が行きかっていたころと違い、建物だけが残る待ち波は却って不気味でもあるのだが。


俺たちがいるのは渋谷あたりか。もう少しで永田町なんだがその周辺は流石に警備が厳重だった。日本に残っていた自衛隊の方々と遭遇した。


彼らは俺たちの進行方向と、その逆と。そこを守っていた自衛隊により誰何され、一度足を止めることとなった。


そして戦時1級特殊陳情書の効果が絶大だった。隊員の方の中でも上官と思われえる人がその場から離れ、更に上官に当たる人を連れてきて。


地上の、とある官公庁ビルに直接つながっている通路を上がりビルの内部。その一室に俺たちはいるのだ。


「戦時一級陳特殊情書、合わせて市長の委任状。これが発行されるのは初めてのことじゃないが、その裁量を個人に委任されているケースは初めてだな。そもそも陳情書の運用自体がほとんど前例のないことであり、かつ現在は戦時だ。相手は変わったがね。臨機の判断が必要になるのだろうな」


そして俺たちと相対しているこの男は竹田三佐。渋谷地区の責任者である。前線と言える場所の一つを任されているとのことだ。


東京は2つに割れていた。旧世界の体制を出来る限り維持する政府側と、新世界の新しい秩序を求める教団側とに。


最悪なことに政治家も多数教団側についている。というかほとんどといっていい。実際には軍政府と旧政府くらいの比率だ。


なんで政治家が新世界の体制側に付いているのかよく分からん。こういのは政治家含めた旧体制とどっかの革命家とかの対立じゃないのか?


とは言えだ。軍事のほとんどを有しているなら、いくら旧時代の政治家たちとは言え鎮圧は可能なのでは?と思うのだが。


コレがそうもいかないらしい。


「はじめは軍内部でも意見が割れた。しかし先の、先の先のか。戦争の過ちを繰り返すわけにもいかんと言うことで軍は一本化した。旧体制側に着くということでな。数少ないとはいえこちら側についた政治家はおるのだ、超党派ではあるが総理はこちらにいる。そもそも諸外国の脅威が完全に排除されたとは確定されていない状況、国内で争うなどあり得ん。そもそも既に基地だが魔物もいる。

 そして周辺の生き残った国民の保護、救助、避難支援。こちらはやることが多すぎるのだ。いくら元の法をベースに統治機構をわずかに残しているのみとは言え、自衛隊の最高司令官である総理もいるわけだ。正義などという言葉を使うつもりはないが向こうさんは明らかに敵と優先順位を間違えている」


向こうさん。教団の敵はまさに軍および政治家を中心とした日本の中心人物たちに、国民まで対象にしている。


そして優先順位が支配権の確保とそこにいる国民の洗脳。さらに戦力も十分に保持している。


一本化したと言え軍から向こうに付いたものもいる。また政治家を中心に意思の力なのか様々な異能を発揮され軍でも苦戦中。


江戸城を挟んで千代田区を南北に分け、さらに教団側は品川区と港区、江東区を制圧。西側は山手線が最前線だ。


前線は旧時代の近代兵器こそ使えないもおの鍛えられた軍人を中心に防衛している状況だ。コレはこれで苦しいと思うが。


「なんで人間通しで争ってんのかしら。これ以上、事態をややこしくしないで欲しいものだわ」


「それはこちらのセリフなのだよ。奴らはこちら側はあまり攻略の意志が無い。アイツラの目的は江戸城そのもの。我らとて今更否定しない。開戦当初の謎の通信が真実とするのであれば。江戸城を制してしまえば東京全土を支配出来るだろう。

 そのため、江戸城近辺は正しく最前戦。人同士の争いで死者すら出てる。元自衛隊としては、やるせなさでいっぱいだよ。」


やることの多すぎる自衛隊に対して奴らの目的はシンプル。南北に引かれた前線を押し上げるか無理に突破してダンジョンを攻略。


そして王権をとることで一気に周辺、日本全土なのかの支配権をえる、と。


無茶苦茶だが俺たちは教団の目標であるそれを否定できない。同じようなことをしようと思っているから。


違いは、その目的。俺たちにとってダンジョン攻略及び王権神授を得ることの目的は、ホワイトと対峙し、世界を元に戻すため。


なのだが、江戸城ダンジョンに向かうとしてもそのたびにドンパチやってる間を縫って「ちょっと通りますね」という訳にはいかないだろう。


それに、戦時一級陳情書の効力は、軍行動に関わること以外の指揮権を一部持つことと等しい。


陳情自体はまとまりのあった周辺地区からはソレなりに届いているらしい。とは言え教団との戦闘もあり人員は割けない。


得意指揮官級の不足が深刻らしい。そこで単純な救助作業と魔物対策に特化した小隊をそれぞれ派遣し、現地の首長に一時的に特務佐官を与えることにしているらしい。


これ、北条が特務佐官で俺は部下でもう少し下、という訳に、いかなそう雰囲気で。それが先ほどの前例のないという武田の言に繋がるわけだ。


余りに東京の状況が怪奇すぎてここに至るまでが長くなってしまったがとにかく、ここからの俺たちの行動は大きく2択。


まず教団側への協力は無し。


どちらの体制にも与さずに江戸城へ突っ込む案。危なすぎるし撤退ルートが無い状態で攻略するつもりも流石になかった。


旧体制側に協力していく案。時間はかかるだろうが俺たちだけでの攻略よりは蛙¥遥香に安全。問題は、こっちにだって教団との闘いというリスクがあることと。人相手の戦いであるため人を差殺す可能性があること。俺自身はいずれは若しくは、と思っていたことだが。


俺たちはここにきてまた新たな選択を迫られるのだった――








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