第26話 成功という理想は、そろそろ奉仕という理想に取って替わられてしかるべき時だ

坂田の拠点へと帰った俺たちはまずはダンジョンでの報酬の分配に取りかっかった。


ダンジョンでの成果はおおきく、俺たちが初めてボスを倒した時と同じランプが一つ。コレ定期的に出るんかな?


最初はありがたいけど段々余計なアイテムにならないか?貴重なようでいてそれほどでもないと思っているが。


これは特に俺たちには必要ないので坂田の拠点に分配。4人で一日1000ℓも使わんだろ。この人たちに使って欲しい。


それと始めて見るが武器防具類。防具は皮で出来た鎧が二つ、それと武器


「コレは流石に嫌味じゃないかな?別に良い恰好したい訳じゃないけど、流石にこれは僕もなぁ。釘バットから卒業かとおっもえば本当のこん棒になっちゃうんだもん」


何処までもこん棒で戦わないといけないらしい。剣とかくれよ。と思わなくもないが鞘のこととか考えると携帯性も含めて便利なんだよなこん棒。魔物相手に切断ってなかなか困難なんだよな。ボスとかだとデカいのが多いしこの間の落ち武者みたいに物理が通りにくい敵だって出てきそうだし。


「でもこれで雫の負担だって減るんだからプラスに考えた方がいいんじゃないかしら?見た目なんて私たちは気にしないわ。実際に使う海斗は、ちょっとかわいそうだけど」


これはそれぞれに一つずつで分配した。坂田からはランプだけでいいと言われたが俺たちも防具はともかく武器は一個でいいんだよ。


俺は基本、重力操作で戦うし、接近しての戦闘は海斗くらいだからなぁ。必然、。防具だって一つでも大丈夫そうなのである。


それに俺たちは一応警察装備もあるが坂田たちはあまりいい装備を持っていなかったし。最も坂田たちはそこまで上昇志向があるわけじゃない。


ダンジョンを深く潜って王権を得ようという気持ちはないらしいし。今回のダンジョンアタックにしても俺たちがいたから。折角だから今のウチに試しておきたいという程度の気持ちらしい。


そもそも坂田が一番欲しがったのはランプ。単純にダンジョンボスを倒して水やその他のアイテムを回収するのが面倒だったらしい。


それが緩和されるのが何よりも嬉しいという。欲が無いというか、本当に言っていた通り日々を楽しく生きていければいい、酒が飲めればいいという思いのようだ。


仲間たちもそれに感化されてリスクはあるものの今の生活は国の支援をそこまで必要としない程度には安定しているし満足らしい。


2階ボスからポーション的なアイテムが出るので外傷や病気も対応出来ているようだし。この人数でならやっていけそうな状況である。


最も、人が増えれば賄いきれなくなるだろうし医師だって足りてない。薬は言わずもがな。野生と言うか自然の中から薬草とされる植物の採取なんかも行われていくのだろう。電気と技術が失われた世界では、新しい薬草の発見などもあるのだろうか。


いずれ本格的な復興の段階になればそう言った研究をする機関や今はダンジョンからのドロップに頼っているポーションの作成なんかも行うのかもしれない。


クスリの研究は錬金術ギルドだったり、意志の力の研究は魔術師ギルド的な立ち位置になるのかもしれない。


世界は、自然とファンタジーでよくある世界観に移り変わっていく。それがホワイトの望む世界なのかもしれない。教会の成立が、一番の懸念点だな。


祭る神がホワイトじゃ、教会と敵対しなきゃならなくなっちまう。だが、そもそも俺はそんな世界を望んでいない。


いや、人類が望んでいないと考えたい。偉大なる先達たちが、宗教による制限などを乗り越えて科学を浸透させ、科学を発展させ。文明を気付いてきたのだ。


それは、人類の共通意志だったと思いたい。だからこそ俺は、一個の存在が強制的に作り上げた制限のなかでの歪な発展を拒む。


その制限を取っ払って、再び宇宙にまで進出を夢見る人類を、取り戻したいのだ。


「じゃあ案内するねー。隠してあるんだけどさ、小さい船? みたいのがあってさ。それで向こうに渡れるんだよ。もっとも、泳いで渡ることも出来ないわけじゃないけど。でっかい魚みたいのがいるから、水中では戦いたくないね。でも。川の水を一部お酒にしながら進めばそいつらを避けて渡れるよ。僕だけが出来る裏技」


川には魚型の魔物が結構いたらしい。それで川を渡るのが難しくなっていたのか。橋はダンジョンがあるし、人工物以外はダンジョンは干渉しないのか?


そう言えば山だった地にはダンジョンはなかった。小さい山というか丘くらいしかなかったがそれで小規模な林みたいなところにもダンジョンの反応は無かった。


野生生物や魔物は沢山いそうだったが。北海道ととはどうなってるんだろう。


今は気にしても仕方が無いが。山脈地域とかも。あまり考えたくはないが大昔のようにそこを超えるのは一大事みたいに苦労するんじゃなかろうか。


ホワイトは広範囲に人類の生存圏を広げたくないんじゃないか?そんな世界の謎をじっくりと解き明かす道もあるんだろうが、俺の選ぶ道は直線距離を突っ走る方向だ。


そして川を渡った後に坂田が案内してくれたのは地下に続く入口。地下鉄みたいな感じだがそうじゃない。


「日本にも本当に合ったんですね秘密通路なんて。一時的に政府機構を西方に構えられるようにしてあるとか都市伝説は効いたことがありましたけど」


俺も雫と同じ感想だ。そして。


「東京方面からやってきた人たちが使ってるのを見たんだよね。あの人たちは他の街の様子は知らなかったんだよー。

 どこまで本当の話をしていたのかは知らないけど。とにかく、僕たちが不干渉を望んだらあっさり引く程度には向こうも大変なんじゃないかな?」


坂田との同盟関係のようなものは継続するということになっているらしい。少なくとも坂田は俺たちを味方と認識してくれている。


時に協力することが出来て、そして干渉をしてこない。コイツにとって都合いい存在だからな。同盟解消する意味もないし。


もし干渉しようとしていたらコイツとも争うことになったのだろうか?あまり考えたくない道だな。


他のコミュニティを訪れていた場合はどうなっていただろう?坂田のように取りまとめるやつがいれば同じように協力することもあっただろうし、敵対することもあったのだろうか?


これから小規模な集団がそれぞれの生存圏を確立していった場合。・危機があるうちはまだしも、安定してからは。


取りまとめる人間が北条のように再興を担える人物だったり、坂田のように欲のない人間ならいいが。


戦国時代再び、みたいにはならないで欲しいものだと願いたいものだ。



この地下道がどこまで続いているかは分からないが都内から来た人間が通ってきた道だ。ならば進もうと思う。


今度こそ東京へ。江戸城へ。向こうがどうなっているかは分からないが折角北条から託されたコイツもあることだし、出来れば最短でホワイトまでの道を進みたいものだ。この先がどうなっているのかに思いを馳せて。坂田に別れを告げて。俺たちは。進む。


自分たちの意志に沿って――

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