文明が崩壊した世界では、ダンジョンクリアで神様から王権が貰えるけど俺はそれより神を超えたい~第三次世界大戦は神の怒りで終了し人類はこん棒と意志で闘うようです~
第5話 将来について悩まない。すぐにやって来るから。
第5話 将来について悩まない。すぐにやって来るから。
「二人ともおはよう。同時に目が覚めるとなんて案外気が合うんじゃない?」
「おはよう遥香。篠崎さんも。遥香、俺はどれくらい寝ていた?」
「ほんの30分程度よ。狼も来なかったからソコは心配ないわ。人も、見かけなかったけど」
「おはよう?あ、私、寝ちゃってたんですね……あっ!その、先ほどの傷は?大丈夫なんですかっ」
「大丈夫よ。ほら見て、ピンピンしてるわ。雅人も腕、見せてあげたら?」
俺も半信半疑だったからな。丁度いいと思って腕を見ながら拳を握って見せる。肩を回す。うん、問題ない。
雫もそれを見て安心したのかホッとした様子だ。
「そうだ遥香、俺が寝る前に何か言ってたか?説明がどうとか」
「そうね、少し話したいことがあるのよ、うまく説明できるか分からないけど。これからの行動にも影響すると思うの、だからまずはお話ね。それと雫、敬語禁止でお願い。雅人もね。ああ、話は雫も聞いて貰うわよ?」
状況がイマイチつかめていない様子の雫だが首を縦に振っているからOKということだろう。俺も頷き遥香の次の言葉を促す。
「ええっと、何から話そうかしら?まずは、さっきの雅人の腕のことから話しましょうか、あれは、多分だけど、意志の力ってやつだと思うの」
「あれは超常現象だったよな。俺は自分で経験したから分かるが腕が温かくなってな。痛みもスッと引いていったんだ」
「分かりやすく不思議な力よね。雫のお陰よ。あれはきっとあなたの力。雫の意思は癒しの力ってところだと思うの。それでね、私にも、多分あるのよ。意志の力ってやつが。信じられないんだけど、今も見えてるのよね…………」
遥香の話は到底信じられる内容ではなかった。少なくとも昨日までなら。だが、目の前で超常現象を何度も見た今なら、そんなこともあるのか?って程度の内容だが。
遥香には、色々なものが見えるようになったらしい。具体的にはなんというか所謂ゲームとかファンタジーでの神眼のようなものらしい。
遥香はあまりゲームをやらないのか最初は上手く説明できない様子だったが俺の理解はこうだ。
例えば周囲の敵意が視える。例えば人の状態が視える。例えば街の様子が視える。
周囲の敵意はそのまま索敵に使えるようで、先ほどの三体目の黒狼の出現にいち早く気付いたのも、視えたから。
人の状態ってのはさっきの俺が死にかけであることや、雫が治癒の力を発現させたときに何かが減ったことが分かったりだ。
街の様子ってのは記憶にある地図がぼんやりと浮かび、駅の周囲が真っ赤に見えるようだ。これは本人もまだ上手く見えないらしいが。
そして雫の何が減ったかというと
「多分、それが魔力ってことなんじゃないかと思うの。それと、駅の周辺が赤いのも魔力の濃度?みたいな。上手くいえないけど、そんな気がするの。そして多分、今までの世界と違ってあの悪魔のいう神話の世界では、直感は大事にするべきだと。感じるのよ」
「あの、直感かどうかは分かりませんが、たしかにさっき処置中に祈ってくれって言われたあと、一気に疲労感が襲って来ました。それは、魔力が無くなったから?私に治したい!っていう意思があったのは事実ですし、意志の力を使うのに、魔力が必要っていうのは、なんか分かる気がしちゃうんです」
ということで恐らく魔力じゃないか?という推察である。
直感を大事に、ってのは俺も賛成だな。
かのアインシュタインも理詰めで新しい発見をしたことがない、と言ったくらいだ。物理法則が機能していていた時代にだ。
こんな超常の世界では役に立つか分からん理屈より、意志の力ってのを感じてるこの子たちの直感の方が信じられるってもんだぜ。
それで気になるのは俺の力なんだよな。
実は不思議に思っていたことがある。雫を抱えてバリケードを飛び越えたり、ドアを破るほどの勢いの黒狼の突進に槍を合わせて力負けしなかったことだったり。
明らかに昨日までの自分よりも力が出せている気がするんだ。あの時は火事場のばか力かと思ってたがどうにもこんな話を聞くとな。
あれもなんらかの意志の力なんじゃないかと思う訳だ。それで俺と雫は眠気に襲われた、とも。遥香は、起きたばかりだったから?
分からないことは多いが推論は無駄じゃないはずだ。あの白いのが言っていたように使い方はこれから検証していく必要があるのだから。
分からないことを分かるように。検証を積み上げていくことが科学だ。あの白いのの言葉に従うのは癪だが、仕方がないだろう。
……感情と論理のジレンマにはこれからも悩まされそうだな。遥香の言葉を借りれば、あの白い影は正しく悪魔だ。人を苦しめるという意味において。
「もう一つ、気になることがあるのよ。街の様子が少し分かるって言ったじゃない?それで、駅があるところだと思うんだけど。真っ赤なのよ。他の場所に比べて魔力の濃度が恐ろしく高いんじゃないかしら?悪魔が言っていたダンジョン。それがあるのかもって思うのよ」
「世界は変わっちまったんだ。いずれはダンジョンとやらも行く必要があるのかもしれないけどな。根拠はないがどうせ危険な場所だろ?少なくともすぐに行く必要はないだろ。それよりも、だ。まずは自宅へ戻りたい。
戦闘をしたせいもあるかもしれないが空腹感があってな。家に行けば食い物はそれなりにある。二人にも振舞えるくらいにはな」
「私も、自分でもびっくりするくらいお腹が減ってるかも?さっきの治療のせいでしょうか?あ、取り敢えずだったら向かいの薬局に栄養補助食品とかあるかも?
いや!私だって悪いことだとは思いますよ?でも、思い知ったんです。こんな状況じゃ、犯罪がどうとか、言ってられないです、よね?」
「そうね。病院だって玄関のドア壊れちゃってるし。予定通り雅人の家に行くのには賛成ね。食料には期待してるわよ?それと必要そうなものは持っていくわ。奥で台車見つけたし出来るだけ色々持っていきましょ。それと雫は、一緒に来るってことで良いのよね?一応改めて確認しておくわ」
「はい。迷惑でなければ一緒にいさせてください。あんな狼がいる世界で一人とか怖くて無理ですし。一緒に行動させてください」
雫が仲間になった!って別に効果音が流れたわけじゃないけど。
神話の世界って言ってもゲームの世界とは違うしな。
しかし仲間が増えることはいいことだ。家に帰ってもう一人、期待している奴が仲間になってくれれば助かるが。
そうして病院と薬局から持ち出せる限りの物資を台車に詰め込み、俺たちは病院をあとに俺の自宅へと向かうことになった。
病院の側の薬局って小さいけど色々あるのね。雫にある程度必要そうな薬を選んで貰えたのも大きいかもしれない。
彼女たちは彼女たちで女性にとって重要な物資もあって喜んでいたし。
そして俺は棒状の栄養食品を齧りながら移動を開始するのだった―
―◇◇―――――――――
「そっちは赤が濃いから避けた方が良さそうね。こっちの青は、学校?非難している人もいるみたいね。それと黄色は……考えたくはないけど人でしょうね。ただし遭遇したくない人達。店舗から色々と物色中ってとこかしら。ま、私たちも人のことは言えないけどね」
移動を開始した俺たちだったが遥香の力は思った以上に役に立ってくれた。
化け物がいそうな所や人のいそうなところが分かるようなので慎重にではあるが順調に進むことが出来ている。
少数の青もあるらしい。黄色との違いは同じ物資の物色でも意識の違いからなんだろうか?そもそも色の違いも憶測でしかないわけだが。
多数の青が集まっている、避難所と思われるところにも黄色が混じっているのが人間の怖いところだろうか?
それとも多くの人が集まって、悪意のない人間がゼロってことの方が不自然ってことなんだろうか?
そんなことを考えながら凡そ一時間、大きな問題なく自宅の前まで着くことが出来た。普段の倍以上は時間が掛かったかな。
慎重に進んだのもあるけど、意外と台車って外の道路だと運びにくいのな。道路は意外と凹凸があるっていうけど、普段は気づかないんだよな、その辺は看護師の雫の受け売りが。
ただそれでも歩きにくいとは思わない舗装された道路だ。この舗装がいつまでもつのかは、俺には分からない。人の手による補修が期待でいない現状で、文明の痕跡はどれくらいの期間、残るのだろうか?
案外早くに自然が侵食して来るって人もいれば、数百年単位である程度は保全されるって人もいるんだよな。
ま、今は考えても仕方がない。そのうち分かることだ。迎えられるか分からない将来のことなど、考えている余裕はないのだから。まずは、生きることだ。生命の原点たる欲求であるからして。
たどり着いた自宅に荒らされた形跡はない。周囲に人影もない。この辺は所謂閑静な住宅街だ。自分で言うのもなんだが民度も高い。
恐らくは避難所に向かったのだろう。荒らされていないのはまだ、店舗などに十分物資があるからだろう。そのうちそうした店などの物資が枯渇してくれば住宅も荒らされるとは思ってる。それは、悪いことではないとも。
避難所などで救助の見込みが無く時が過ぎて行けば、そこに集まった人たちは周辺から物資を集めるんじゃないかな?俺だったらそうする。
そしてそれは、非常時においては仕方のないことだと、大半の人は割り切るだろう。中には割り切れない人もいるだろうが。
それこそが分断の原因になったりするのかもしれない。現状ではやはり避難所よりは個別の対応がいいのかもしれないな。
「ちょっと、なにぼけっとしてるのよ?あなたが鍵開けてくれないと入れないんだけど?それとも窓割って入る方がいいの?そうだ、荒らされ済みです!ってしといた方がかえって安全かもしれないわね?それじゃ……」
「待て待て!待ってくれ。開けるから。今スグ開けますから!これでもローンで買った俺の城なんだぜ?壊さないでくれよ。ま、一人しか住んでない城なんだけどな。そこは追及するなよ?」
遥香に窓を割られないうちにと急いでカギを開けて2人に入るように促す。物資温搬入も。お願いすることになるな。
「台車の物資は適当にそこらに積んどいてくれ。それと冷蔵庫の中の者も適当に飲み食いしてくれ。どうせ電気が使えなくなってる。悪くなりそうなものから処理したいんだ。火が必要ならあとで用意する。まずはそんなとこでよろしく」
「それは分かりましたけど、雅人さんはどうするんです?家の中のことも私たちじゃよく分かりませんし、出来れば色々と教えて欲しいんですけど。」
「あぁ。俺はちょっとソコまで知り合いを探しに行ってくる。多分、いると思うんだ、と言うか居て欲しい。だから申し訳ないが物資は任せた。ホント適当でいいから。取り敢えずツッコんで中で休んでてくれ。細かいことは後で俺がやるから」
そういうと納得したのか二人は協力しながら玄関から搬入を開始してくれる。こういう場面でも意思統一が図りやすいのは小集団のメリットか。
とは言えやっぱりもう一人くらいは欲しい。そしてその一人に最適な奴が近所にいるわけで――
「あ、最上さん!おかえりでいいのかな?良かったー、戻ってきてくれて。前に停電した時も最上さんちって準備万端で、助けてもらったじゃん?今回も助けて貰おっかなーって覗いてたんだよ。帰ってきたならさ。そっち行ってもいい?」
昨日から緊張しっぱなしだった俺と比べて随分とのんびりとた口調で話しかけられて拍子抜けするが。こっちこそお前には頼ろうと思ってたんだ。居れくれて助かった!是非とも来てくれ海斗。
斜め向かいの家の窓から顔を覗かせて声を掛けてくれた友人の姿を確認し、昨日からずっと陰鬱だった気分が少しだけ張れるのだったー
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