第7話:魂のすり合わせ
天童寺和也は、チームのメンバーとの対話から得たアイデアを基に、新しい企画書をまとめ上げていた。
それらをAIの分析データと照らし合わせながら、彼はゲームのコアコンセプトを再構築した。
和也はそれらのアイデアを入れ込むことで、AIが導き出す「どこかで見たり聞いたことがある」平均的な面白さに対する定義でまとまらない個性が集まったゲーム内容になる予感でワクワクして書類をまとめて行った。
プランナーあるあるなのかもしれない「今ボクが世界最強のゲームデザインを生み出している」という感覚で興奮していた。
そしてその興奮冷めやらぬまま、部長へのプレゼン予約まで入れてしまう。
(またしても六本松さんの許可は同時進行同時承認)
※
翌日アポを取り、再び
今回は、会議室ではなく直接席迄来いという話になった。
「部長、先日の企画につきまして、チームメンバーと話し合い、内容を大幅に見直しました。再度ご報告させていただけますでしょうか。」
藤堂部長は、天童寺のどこか吹っ切れたような表情に気づき、席を促した。
天童寺は、新しい企画書を開き、説明を始めた。
前回のようなAI任せの羅列ではなく、彼の言葉には、チームメンバーとの対話から生まれた熱が宿っている。
「重森さんからは、このバトルシステムに、あえて『不完全さ』を残すことでプレイヤーの成長実感を引き出すアイデアをいただきました。
絹谷さんからは、AIの候補とは全く違う、主人公の過去を匂わせるビジュアルコンセプトの提案が。
そして鞠川さんからは、特定の場面でプレイヤーの感情を決定的に揺さぶるためのサウンド演出の妙を…」
天童寺は、チームメンバーの名前を挙げながら、彼らが提案してくれた具体的なアイデアを熱心に説明した。
藤堂部長は、じっと耳を傾け、時折頷いている。
企画は、明らかに前回のものより深みを増していた。
データ的な最適化の上に、人間の創造性が乗っている。
プレゼンを終え、天童寺は期待を持って部長の言葉を待った。
今度こそ、この人間的な要素を取り入れた企画なら、認められるだろう。
部長は、しばらく無言で企画書をめくっていた。そして、顔を上げた。
「天童寺君。努力したわね。前回とは比べ物にならないくらい、息吹が感じられる企画になったわ。チームの皆さんとちゃんと話をして、彼らの専門性から素晴らしいアイデアを引き出した。そこは本当に素晴らしい進歩よ。」
天童寺の胸に、安堵と達成感が広がった。
「ただね…」
再び部長の「ただ…」が来た。
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