第33話『ドラゴンクエスト公式ガイドブック』エニックス

 今回取り上げる本を見て「なんじゃ、そりゃ」と思われた方も多いと思う。ごもっとも。物語じゃないじゃないかと。そのとおり。


 じゃあ、『ドラゴンクエスト公式ガイドブック』とはどんな本なのか。どうしてここで取り上げるのか。考えてみたいと思います。


 これは「ゲーム攻略本」に分類される本です。


 内容は、ファミコンゲーム「ドラゴンクエスト」に登場する勇者が装備する武器、身につける防具、使用する道具に関するデータ、勇者が倒すべき敵モンスターに関するデータ、勇者が冒険を繰り広げる異世界・アレフガルドの地図データをまとめた資料集です。


「なるほど、この資料集を見ながら遊ぶと効率的にゲームが進められるわけだな」


 確かにそういう面もあるのですが、じつはそれだけではありません。


 ドラゴンクエストが発売されたのは1986年で、この本はゲームが発売された後、3年もたった1989年に刊行されました。ドラゴンクエスト3が発売されたのだって1988年です。なぜこの時期に刊行されたのでしょう。


 それは、このころからゲーム攻略本が、より深くゲームを楽しむためのツールに変化してきたからです。


 従来のゲーム攻略本は、効率的にゲームを進めるためのガイドブックとして、また、自力でゲームのクリアできないプレイヤーへの指南書として読まれていました。


 それが、データ量が増加してストーリー性が高くなり、ゲームシステムが複雑化していくにつれて、より深くゲームの世界観を理解し、楽しむための資料として、攻略本が読まれるようになっていたのです。


 この本のタイトルに「公式」とあるのがその証拠。当時はさまざまな出版社が独自に解析したゲームの攻略本をてんでバラバラに刊行していた時代。ゲームを開発したエニックスが、開発時の設定資料とゲーム内の非表示データを「公式設定」としてまとめたのがこの本です。


 ――これがドラゴンクエストをドラゴンクエストたらしめている情報です。これを使って思う存分ドラゴンクエストを楽しんでください――というコンセプトのもと、『ドラゴンクエスト公式ガイドブック』は作られています。


 この本を読む人は、ここに載っているデータを駆使して、ゲームをより深く、として追体験しているのです。


「いつまでも読んでいられる」


 それは、もうひとつの英雄物語ドラゴンクエストが、この本を通じてプレイヤー自身の内から現れるからだと思います。



『ドラゴンクエスト公式ガイドブック』(エニックス)


 1989年にエニックス(現スクウェア・エニックス)から出版された『ドラゴンクエスト』の攻略本。『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々』、『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ』も同時に出版されている。ゲームソフトの開発メーカーであるエニックスが自ら出版し、「公式ガイドブック」と銘打った攻略本の決定版。以降、「ドラクエ」のナンバリングタイトルが発売される都度、公式ガイドブックは出版されている。最新作は、『ドラゴンクエストⅠ&Ⅱ公式ガイドブック【HD-2D版】』。



 次回は、亀岡修『小説天空の城ラピュタ』を取り上げます。

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