13,涙の粒
サマンサのホウキがやって来て二人が乗って飛び立とうとしたときに、オサイ会長がサマンサを呼び止めました。
「この時間は人間たちのガラクタが飛び始めるから気を付けるんだよ」
とオサイ会長は二人に向かって忠告をしてくれました。
サマンサはうなずいて、そしてアリスはオサイ会長に向かって手を振りました。
ホウキはアリスの家に向かって飛び続けます。
どんどん飛んで、向こうに「この先は夜の国」と言う標識が見えてきました。
なんだかアリスにはこの標識が懐かしく思えました。
やがて標識を越えると、アリスの街の夜景が変わることなく下に広がっています。
サマンサがアリスの家に向かって、ゆっくりとホウキの高度を下げ始めた時です。
轟音と共に雲の中から大きな鉄の塊が飛び出してきました。
サマンサはホウキを必死に操って衝突を何とか避けました。
けれども飛行機が出す強力な風が、二人の乗っているホウキを吹き飛ばしてしまいました。
吹き飛ばされたホウキはクルクル回って、その勢いでアリスはホウキから落ちてしまいました。
サマンサはホウキを懸命に操ろうとしましたが、飛行機の出す強い風で遠くまで飛ばされてしまい、アリスからは見えなくなってしまいました。
アリスは真っ逆さまに落ちていきます。
アリスは懸命に魔女達の前で披露したように飛ぼうとしましたがうまく行きません。
手足をバタバタさせるだけでどんどん地面が近づいてきました。
「キャー」と叫んで顔を手で覆おうと同時に体がドスンと地面の上に落ちました。
コンコンと音がしてドアが開きます。
「アリスうるさいわよ、何を騒いでるの」
お姉ちゃんの声が聞こえます。
「アリスったらベッドから落っこちてるじゃないの」
と言ってベッドの下で寝ているアリスを、覗き込むお姉ちゃんの顔が見えました。
やがて階段をトントンと上ってくる音も聞こえてきました。
「アリス何してるの、ベッドの上で遊んでたの?」
お母さんの声を聞いてアリスは起き上がりました。
「良かった、無事に家に戻ってきたわ」
と言って周りを見回して、サマンサを探し始めました。
「サマンサはどこ? 魔女のサマンサ。
お母さんに魔法学校の大切なお話があるの。
サマンサからお母さんにお話ししてもらわなくちゃ」
と、アリスはお母さんとお姉ちゃんに言いました。
それを聞いて、お母さんとお姉ちゃんは笑って言いました。
「アリスったら、また寝ぼけてたのね」
「もういいから早く寝なさい、静かに寝るのよ、もうベッドから落っこちたらだめよ」
と言ってお母さんとお姉ちゃんがアリスの部屋から出ようとしたときに。
「イタイ!」とお姉ちゃんが叫びました。
お姉ちゃんが足をあげてみるとキラリと光るものが床に落ちています。
「これ何、ガラス玉じゃない、危ないから捨てなさいよ」
とお姉ちゃんは言ってガラス球を拾い上げました。
アリスは急いで、お姉ちゃんからガラス玉を取り戻して言いました。
「これは大事な宝物なの!」
すると、お姉ちゃんとお母さんは
「大切なものは大事にしまっておきなさい」
と言ってアリスの部屋から出ていきました。
涙の粒を大切に手に包んで持ったアリスは、ベッドに潜り込み、サマンサや魔法の国の出来事を思い出します。
「いつかまた夢の中で会えると良いな」
アリスの涙の粒は魔法の国の宝物、大切に持っていたら、いつかきっとサマンサがアリスを迎えに来てくれるでしょう。
おしまい
魔法の国のアリス トイボン @TOIBON
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