12,魔法学校
扉がゆっくり開くと長い通路が見え、両側に点灯した明かりが教室の入り口を示しています。
サマンサは通路をまっすぐに進んで、突き当りの大きな扉の部屋の前に行き扉をノックすると、
「お入り」と声が聞こえて来て、扉がゆっくり開きました。
中には大きな机がありその向こうに、少しやせた背の高い老婦人が眼鏡をかけてこちらを向いて座っていました。
サマンサはアリスの手を引いて部屋の中に入ると校長に向かって。
「今年卒業したサマンサです。そしてこちらがアリスです。オサイ会長の指示でこちらに伺いました。」
と、少し緊張した声で言いました。すると、
魔法学校の眼鏡をかけた老婦人はうなづいて言いました。
「私が校長のオリエです、アリスさんよろしく」
その後、サマンサに向かって、
「サマンサさんもう一度あなたからわたくしに、この件のいきさつを説明してくださいな」
と言ったあと、
「アリスさんはそこに座ってゆっくりしていてくださいね」
とアリスに言いました。
サマンサはオリエ校長の横に行って話始めましたので、アリスはソファには座らず、壁にかかっている写真や絵画に興味があったので立って眺めていました。
やがてオリエ校長がアリスを呼んで、
「アリスさんサマンサさんの話とオサイ会長が送って下さった動画を拝見したところ、あなたは確かに魔女の素質を持っているのは間違いなさそうです。
ただ、この学校の記録にもあなたに繋がる魔女の血筋の記録は残っていません。
ですので、考えられるのは記録に残らないくらい遠い昔の、あなたの祖先の中に魔女がいたのかもしれません、そしてその魔女の力が突然目覚めたのだと思われます。
ただあなたは魔法の使い方をまだ全く練習して無いようですから、本校に入学して一から魔法の勉強を始めることをお勧めしますよ。
なお、この学校は寮生活になりますから、お母様と相談して、お母様の了解を頂いてから入学手続きを始めましましょう」
アリスはオリエ校長が言っていることが難かくて理解できなかったのですが、横でサマンサが易しく説明して助けてくれましたので、
「わたしはよく判りません、だからお母さんとよく相談をさせてください」
とアリスは精一杯答えて言いました。
「よろしいです、サマンサさんあなたがアリスさんに付き添って、アリスさんのお母さんに学校の説明をして、承認を頂いて戻って来て下さい」と言いました。
サマンサとアリスはオリエ校長にお礼を言って学校を出てからホウキに乗ると、サマンサがアリスに向かって、
「アリス良かったわね、入学許可が下りたわよ、今からオサイ会長の所へ戻って報告するから、その後でアリスの家に送っていくわね」
と、嬉しそうに言いました。
アリスは魔法学校への入学はさほど嬉しくはありませんでした。
何と言ってもお母さんと離れて生活するのは嫌でしたので、
「サマンサ、わたし魔法学校に入らなくちゃダメ?」と聞いてみました。
サマンサはアリスに優しく言いました。
「お母さんと離れるのが嫌なんでしょ、でも週末はアリスのお家に帰れるのよ、それに魔法学校に入れるなんてとっても名誉なことなのよ、でもゆっくり考えてから決めると良いわね」
とサマンサが言い終わると、ホウキは魔女会館に戻ってきました。
扉が開いて中に入ると、オサイ会長だけが長机を前に座って、二人の帰りを出迎えました。
サマンサはオサイ会長の前まで行き、魔法学校のオリエ校長の言葉を伝えました。
オサイ会長はサマンサの報告を聞き終わった後でアリスに向かって、
「アリスおめでとう、あなたもこれで魔女の資格がみとめられたのよ。
正式には魔法学校を卒業する必要がありますがね、急な話で分からないことだらけでしょうから、それとお母様の了解も得なければならないですからね。
そこでこれからサマンサにアリスの家まで送って行ってもらいますので、サマンサから今回の事をお母様に説明をしてもらいます。
そしてその後3日が過ぎたら、サマンサをもう一度アリスの家に行かせますので、その時に返事をして頂くことにしましょう」
とオサイ会長はアリスに言いました。
アリスは何だか難しい大人の会話の中にいるようで、今度もよく理解出来ませんでしたが、サマンサが一緒に来てくれるのが嬉しかったので。
「オサイ会長、よろしくお願いします」
と答えました。
オサイ会長はサマンサを呼んで二人で何事か話をした後、サマンサに手紙を渡しました。
それから、サマンサがアリスの所へやって来て、
「さあアリスの家に帰りましょう、わたしが送っていくからね」
と言って二人で会館の外に出ました。
つづく
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