第8話 君は雲居の空
誰と話してるんだろ…憂。
「高校生活どう?」
「まー、ぼちぼちだな。そっちは部活帰り?」
「そーそ、夏休み中も部活ばっかで参っちゃうよ。」
「そりゃご愁傷さまだな。」
なんか、楽しそうだ。私…邪魔かも…。
「そういや、一人?」
「んーん、勇太と一緒に来た。今焼きそばパシらせてる。笑」
「あっはは、相変わらずだなぁ。そっか二人同じ部活なんだもんな。」
「そういや憂の方は?」
「俺は近所の仲良くなった子と。」
「へぇ〜?女の子?」
「ま…うん。」
広いところに移動したい…会話が聞こえないとこに……。その気持とは裏腹に人混みに飲まれ私は一向に進めずにいた。
「あー!!憂じゃねーか!」
「うおっ、勇太…に涼介も圭太もいる。」
「おひさー、憂。」
「ちょっと太った?久しぶり、憂。」
「うっせ、変わんねーな圭太…。」
「なー聞いてくれよ憂!涼介のやつ彼女と一緒に来たんだってよ!」
「うっそ、あの涼介に…!?」
「やかましいわ、だから早く解放してよ勇太…。」
「え、黙ってきたの?」
「いや、彼女の方も友だちと喋ってて…」
「だから連れてきてやったんだ!気まずそうだったからなァ!」
「羨ましいなー、涼介もついに彼女かー。圭太も中学の頃からそれっぽい子いたし…。」
「いや、卒業してから音沙汰なしで自然消滅。」
「あ、なんか…ゴメン…。」
「んー、憂はなんか出来そうで出来ないよね。」
「あっはは、涼介は相変わらず褒めてんのか褒めてないのか微妙なライン攻めてくるな。元気出せよ、憂。」
「勇太ー…。」
「でもコイツ女の子とデート中なんだってよ!」
「デートじゃねえっての!友だちだよ、ただの!」
ただの…友だち。
「「「へぇー?」」」
「シンクロすんな!!」
「…あ!わり、そろそろ行くわ!いい加減待たせすぎた!すまん!また会えたらいっぱい喋ろーな!!」
「おー、またねー」「次いつ会えるかわかんねーけどまた!」「ばいばーい」「また今度ー!」
話し終わったのかな…私のせい…?憂のいる方に背を向けて待っていた場所で立ち尽くす。
「ごめんごめん!おまたせ!中学の頃の友達に会ってよ、夢中になっちゃって…。」
「…いいよ。」
背を向けたまま答える。涙で視界がぼやけそうになる…。堪えなきゃ…。
「…怒ってる…?」
「っ…!」
「…あっ、ゴメンこんなこと聞いても困るよな…ええっと…。」
罪悪感を感じさせてしまっている…どうしよ…。
「…憂はお友だちといっしょに回らなくてもいいの…?」
声が震えないように慎重に言葉を絞り出す。ホントはこんなこと言うつもりじゃないのに…。
「うん、一緒に回りたい相手は恋夏しかいないから。だめかな…?チャラすぎ?」
「…ふふっ…なにそれ…」
笑いながら後ろを振り向く。今私がどんな表情をしてても、憂には背を向けていたくない。頬に何かが伝っていても。
「恋夏っ…ごめ…」
謝りかけた憂が言葉を飲み込んだ。
「そんなんじゃないよな、恋夏が聞きたい言葉は。」
「…え?」
そういうと憂は、浴衣にも関わらず私の前に跪いた。
「えっ…ゆ…」
「恋夏、一人ぼっちにしてごめん、すぐ戻るって嘘もついてごめん。…あ、謝ってばっかだ…。」
申し訳なさそうに笑って、憂は息を吸って私をまっすぐ見据えた。
「こんな不甲斐ない俺だけど、一緒にいてくれますか?」
「…っ。うんっ、こちらこそお願いします。」
「…よかったぁ…。」
私の返事を聞いて、憂は緊張の解けた笑みを浮かべ安心しきった声を出した。
「では、お手をどうぞ?」
そういって憂は私の前に手を差し出した。
「…ふふっ、どうもありがとう。」
そういって私は憂の手を取り、二人歩き出した。
「次なに回る?射的?ヨーヨー釣り?それともなんか食べる?」
「んーどうしよ、ちょっとお腹すいたしたこせん行かない?」
「いーじゃん!行こーか。」
「うん。」
「わ、たこせんってこんなのなんだ、食べたことない。」
「憂食べたことないの?めちゃ美味しいよ。」
「うんっ…。おいしっ!うわーもっと早くに食べときゃよかったー。」
「でしょー、私よくお祭り行ったら食べてたんだ。…うん、おいし…。」
それから、ヨーヨー釣りしたり…
「この色かわいー!」
「袖ぬれないようにね、恋夏。」
「うん!」
射的したり…
「んー、これ苦手かも…当たんねっ…!」
「もうちょいっ…うあー、だめだったー…。」
ふくびきとかもしたり…
「あのぬいぐるみかわいい…!私絶対当てる!」
「じゃあ、俺も保険として狙っとこうか、よーし…。」
「当たんなかったね…。」
「まあ、光るブレスレットおそろいになったしいーじゃん。」
「まーね、次行こっ!」
他にもたくさんの屋台を回った。いっぱい食べたし、たくさん遊んだ。
「ふー、楽しかったー。」
「いっぱい回ったなー、そうだ、ついでだし本堂にお参りしない?」
「そーだね、お参りする!…あ、5円玉あったっけなー…。」
「5円玉がなくても11円でもいいんだよ。」
「そうなの?じゃあ11円にしよっと。」
本堂に近づくにつれ人が減っていく、本堂に着く頃には人は全くいなかった。
二礼二拍手、お賽銭も入れて、手を合わせお祈りをする。
「(憂とこれからも一緒にいられますように。)」
そして一礼、憂は何をお願いしたのかな。でも人に言っちゃうと叶わなくなるらしいし、聞かないことにした。
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