アル・スカリヤの夜を飛んだ男が語る作戦の真相
収録日:2023年11月
話し手:元アメリカ陸軍第160特殊作戦航空連隊(ナイトストーカーズ)所属 CW3(Chief Warrant Officer 3)エリック・“スレッド”・マクレランド(仮名)
聞き手:戦史ジャーナル『Military Reflections』編集部
──マクレランドさん、貴重なお時間ありがとうございます。まずは、2008年当時の任務内容を教えてください。
こちらこそ。2008年10月、私は第160SOAR、通称ナイトストーカーズの第3大隊に所属していました。任務は…シンプルに言えば、「深く、静かに、そして正確に運ぶ」こと。
その夜、私のUH-60はチーム“ヴァイパー・ゼロスリー”として、アル・スカリヤ郊外への突入部隊搬送を担当していました。
──アル・スカリヤ襲撃作戦は、米軍による初のシリア領内での直接攻撃とされています。飛行ルートや作戦環境について教えてください。
そうですね。離陸はイラク西部のアサド基地から。シリアとの国境を超えるルートは、地形と電波遮蔽を考慮してギリギリまで低空で飛びました。ほとんど地表すれすれ。レーダー回避、熱探知回避、全部意識してました。
我々ナイトストーカーズは“見えないまま運ぶ”のが仕事です。でもその夜は、いつも以上に「見つかってはいけない」任務でした。たとえ墜ちても、回収されない可能性がある。そんな雰囲気でしたね。
──現地に到達するまでに、トラブルや危険はありましたか?
ああ、ありましたとも。国境越えの10分前に、僚機の1つのフレア射出システムが誤作動しました。あの時は心臓が止まりそうになった。敵に見つかったかと思いましたよ。幸い、向こうに防空レーダーや迎撃はなかった。でも、もし見つかってたら、我々の名前はこの世に残ってなかったでしょう。
──着陸時の状況を覚えていますか?
はっきり覚えています。着地は完全な無灯火、地上班との接続時間は90秒未満。降下の直後に、機体の外から小火器の音が聞こえました。突入部隊が接触した証拠です。
でも我々の仕事は、感情を交えずに“降ろして、待って、拾う”こと。照準器越しに村の灯りを見ながら、「誰かが帰ってこない可能性」も常に頭の隅に置いてました。
──作戦終了後、部隊を回収されたと伺っています。その時の状況は?
はい。突入から回収まで約38分。比較的短かったが、精神的には永遠に感じました。部隊が戻ってきたとき、泥と血でぐちゃぐちゃの装備を見て、「本当に実戦だったんだ」と実感しました。
エンジンを上げた瞬間、誰も言葉を発しなかった。皆、ただ黙って空を飛びました。
シリア上空を出たとき、俺は初めて「生きて帰れる」と思った。
──あの作戦を、今どう振り返っていますか?
成功した作戦だと思います。でも、誰にも知られなかった。あれほど準備して、命を懸けて飛んだ作戦なのに、記録にはろくに残らない。
それがこの種の戦争なんです。俺たちは、報道にも出ない「影」を運んでいた。でも、その“影”こそが、戦争の形を変えてることもある。
俺の仕事は誰かを殺すことじゃない。帰還させることです。その夜も、俺はそれをやった。
だから、誇りは持っていますよ。
──最後に、これから戦史にこの作戦を記録しようとする若い研究者たちへ、一言お願いします。
記録に残らない戦争がある。だからこそ、記録しようとする人間が必要です。俺たちは任務を果たした。でも、その価値を後世に伝えるのは、あんたたちの役目です。
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