第4話 シューマンの迷作『流浪の民』

ロベルト・シューマン(1810ー1856)は言うまでもなく、ドイツロマン派の大作曲家の一人である。

ただ、私はそれほどシューマンの熱心な聴き手ではないが、それには理由がある。

 それは、小6の音楽の授業で聴かされた彼の合唱曲『流浪の民』のせいである。いや、あんな曲を教科書に載せた当時の文部省のせいである。

 もさもさした凡庸なメロディといい、キレの悪いリズムといい、なぜ当時の文部省はこんなつまらない、しょうもない音楽を載せたのか、全く理解出来ない。おかげで、私のシューマンに対する印象はしばらく悪いままだった。こんな凡庸な曲よりも、『ピアノ五重奏曲』とか『子供の情景』とか『アラベスク』とか『クライスレリアーナ』とか『ピアノ協奏曲』とか、あるいは今現在、彼の作品で最も大好きな『交響曲第2番』あたりを聴かせてくれていたら、もっと早くシューマン大好き人間になれたのにい〜!と、今でも悔しい気持ちになる時がある(笑)。


 話を『流浪の民』に戻そう。小6の音楽の時間に聴かされたのは、案の定、日本語ヴァージョンだった(それにしても、日本語の歌詞による外国の音楽って、どうしてあんなに間がぬけて聞こえるのだろうwww)。

 だが、この時の音楽教師は気をきかせてくれて、オリジナルのドイツ語ヴァージョンやオーケストラ伴奏ヴァージョンも聴かせてくれたのだが、私のこの曲に対する悪い印象は変わらなかった。「何だよ、シューマンって大した作曲家じゃねえな」と思ってしまった。こんな理由でクラシックが嫌いになってしまう子どもって多いのかもしれない。せっかくクラシックを理解出来る感受性を持っているにも関わらず…。幸い私は既に他の作曲家の名曲を幾つか知っていたから良かったものの。

 そうそう、その時の音楽教師は私がクラシック・ファンだと知って、急にテンションが上がったのを覚えている。やはり生徒の中にクラシック・ファンがいたのがよっぽど嬉しかったようだ(学校の音楽教師あるあるですなwww)。

後に「オーケストラ伴奏ヴァージョンにシンバルが入っていたのは意外だった」という意味の感想文を書いた時、

「良い所に気がついたわね〜!」と大喜びされたのを覚えているwww。


 今でもこの曲が教科書に載っているかどうかは知らないが、もしも小学生がこの文章を読んでいたら、音楽の教科書をチェックしてほしい。この『流浪の民』を見つけたら、要注意だ。そして、これはシューマンの代表作だと間違っても思わないように。私が先に挙げた数曲を聴いて、自分でシューマンがいかなる作曲家か判断して欲しい。シューマンを聴く時は、この『流浪の民』はくれぐれも無視していただきたい。私のように余計な廻り道をしないためにも。







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