第7話 神楽堂の舞姫

「シャン。シャン。」と鈴の音。

心地よい笛の音。

俺様は音に惹かれ、金髪の髪を揺らしながら、獅子舞キリの足が早歩きになる。

マサル、フウマ、リキのヤタガラス達も

大きな羽で神楽の音に惹かれて飛ぶ。

神楽堂のまわりには色とりどりの衣装や面をつけた現実世界と別の、俺様達とおなじ神様の関係者でいっぱいだ。もちろん神様たちもいる。

「なあ、マサルここにはよく来ているのか?」

マサルが答えず、

フウマが「あれ?あれ?キリ、青龍とマサルの話、聞いていなかったのか?

忙しすぎて行き来できてないぞ。」

マサルも「そうだ。フウマが言う通り、来たいが来れてない。神様仕事は何かとみんな忙しいからな。」

「そうだな。確かに。

青龍が天神さんによろしくって言ってたな。

神様は忙しいからな。」

大きいリキがヤタガラスの羽根を大きくバタバタさせて、「神楽の舞がはじまるぞ。早く行こうぜ。」

俺様達は一番前に陣取った。

「わー、舞姫すごくきれいだなー。」

俺様は舞姫の美しさと鈴の音に一気に心を奪われた。

「シャン。シャン。」と鈴の音が響き渡る。

音と一緒に桜の花びらが舞いだす。

うすいピンクの桜の花びらがゆるやかな曲線を描く。

「シャン。シャン。」今度は黄色と赤の木の葉が舞いだした。

美しい景色だ。

マサルが「ここの神楽は八坂神社の四季を舞っているとか。」

俺様は最前列で音に舞に、すべて心を持っていかれた。

舞の音に金髪の俺様の髪がなびく。四つ足の前足がもう動かない。いや、動けない。

「バサッ」大きなヤタガラスのマサルの両羽根が俺様を覆って飛んだ。

「目を覚ませ。獅子舞キリ。」

「はっ」とした。目が覚めた。

俺様はマサルの羽根の中、神楽堂から離れた。

フウマが「危なかったなキリ。」

「?」「どういうことだ?」

「ほら、あの神楽堂を見てみな。」

「いい音が聞こえて、鈴の音が。

きれいな桜の花びらが。さっきと同じできれいだぞ。」次の瞬間。舞姫が・・・「ガブリ。」神楽堂のまわりのお客様を食べた。

「?えーーーーーーーーー!」

「フウマ、どういうことだ。今。今、食べられたぞ。

しかし、周りの奴らは驚かないぞ。なぜだ。」

フウマが「そう言ことだ。

こちらの世界でも悪い奴はいる。

しかし、これも自己責任だ。

神様も夢中になり過ぎて、まわりが見えなくなると食べられるってことだ。」

「なんだそれ。俗世間の人間達の世界と同じじゃないか。」

マサルが「そうだ。神様の世界も人間達と同じさ。なあ青龍。このことをキリに教えたかったんだよな。青龍。」

「そうだマサル。しかしそう、あからさまに言われると照れるな。

俺様はそんなお人よしの龍ではないぞ。ガォー!」

「照れるな。青龍。ハハハ。」

青龍が「キリ、お前が毎日安心して、おみくじを運べるのは、神社の境内で、

天神に守られているんだぞ。

そのことを忘れるなよ。」

「はい。」俺様はまっすぐな気持ちで青龍に返事した。

青龍は「まだまだ奥には、おいしい屋台も

たくさんあるぞ。楽しんでくれ。」

マサルが「ありがとう。そうさせてもらうぞ。

それから隣の知恩院の鐘様はどうだ?変わらず元気か?」

「あー、まだまだ、いい鐘の音を響かせている。」

「そうか。知恩院の鐘様もだいぶお年だしな。挨拶しておくか。」

「それが良いぞ。」

「そうするよ。ありがとう青龍。」

俺様達はマサル達とさらに八坂神社の奥に進んだ。



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