第5話 八坂神社の龍
僕らは何事もなかったように、おいしいパンをお腹いっぱい食べた。
フウマが「さすがにもう入らないぞ。
それにこれ以上食べたら僕のスマートな
ビジュアルが変わる。
うつくしさを求める僕としてはギブだ。」
マサルも「そうだな。食べ放題もこれ以上食べ続けるとお店のパンがつきる。
リキ、キリ終わりだ。
それにさっきからパンを運んでくるお姉さんの顔が少し引きつってるしな。」
リキが「そうだな。これくらい食べれば、
満足だ。それに京都の甘味処も絶対行きたい。
その分、スペース残しておかなくてはな。
ハハハ。」
俺様は思い出した。天神さんはもと人間。
天神さんが『人間界でも大食いは、
だいたい人間とそうでないものが憑いていることが多い。』
「もしかして3人は人間じゃ・・・」
俺様の口をマサルが抑えた。「それ以上聞くな。」
マサルの目が横の人間達をさしている。
そうだ。この近さだと話は丸聞こえだ。」
マサルが「出るぞ。フウマ、会計を頼む。」
フウマが「はい。はい。いつも通り。」
「リキ、キリ、出るぞ。」
俺様たち3人は店の外で待っていた。
「マサル。お金は持っているのか?」
「あー。もちろん大丈夫だ。」
「俺様は持ってないぞ。」
マサルじゃなくリキが「気にするな。俺様達は金はある。」
フウマが「出て来た。」
マサルが「どうだった。大丈夫だ。招きの猫の絵を残してきた。」
「招き猫?」
「そうか。サンキュー、フウマ。
よし、次は八坂神社だ。行くぞ。」
マサルを先頭に俺様は京の町を修学旅行生として楽しんでいる。
ありがとう天神さん。
パン屋左、横断歩道を渡り、俺様達は細い道に入った。
「クンクン。酒の匂いがする。」
リキが鼻を鳴らす。
フウマが「そうだな。ここは大人の街。
先斗町だ。キリ、よく見てな。
看板がお酒のマークだろう。」
「そうか、ここが先斗町か、
そう言えば、境内前の通りから
先斗町で飲むぞー。気合いを入れて向かう、
おじさんたちをよく見かけたが、ここなんだな。
街並みは昔のままのようだ。」
マサルが「そうだな。すぐ横の鴨川と位置関係は昔から変わっていないからな。」
先斗町を抜け切ると左手に鴨川、四条大橋が見えた。奥に南座。
「へえー。あの南座は作りが昔のお城見たいだな。」
フウマが「そうだね。キリ、あそこは僕のような女形のきれいな男子がいっぱいいるところだ。」
「男子がいっぱい?俺様達、神の使いには男女の区別がない。だから想像がつかないが。
なんとなくだ。わかった。」
リキが「キリ、なんだそれ。看板だけでも見とけ。」
マサルが「だな。これも人間界の修学旅行だ。キリ。」
俺様はキョロキョロと南座歌舞伎の看板を見ていた。
少し年上のお姉様方が俺様を見て
「きゃー、イケメン。」と叫んだ。
「なんだ?なんだ?俺様の金髪のせいか?」
フウマが「じゃないよ。イケメンは褒め言葉だ。」
「そっか。俺様は褒められているんだな。
ニヤリ。」
俺様は少しいい気分のまま真正面を見た。
瞬間、カラダが固まった。朱色の八坂神社の門が光って見える。その門から大きく口をあけてこちらを見てる龍が俺様を見ている。
「マサル、龍が・・・」
「大丈夫だ。行くぞ。キリ。」
俺様は3人に手を引かれ正面八坂神社へ一歩一歩、近づいた。
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