第21話 戦争中変死関連話
あゝ彼奴がいぶせしい
夥しい数の死体と
凄惨な傷の彼奴と僕
戦争中でなければ
僕は逃げていた
現在八時五分
三月七日僕の誕生日
この日にこの状況になるとは
なんとも皮肉である
戦時中そん時三月二日
其れは突然現る
その軍に居たある一人の青年
右腕が酷く爛れ
ドロドロに溶けていた
其れは何のせいでもなく
伝染病のせいだつた
その皮膚は赤黒く変色し
骨が見えそうな程だ
その青年は右腕以外は
何も無い普通の青年だつた
何時もと変わらぬ平然と
逆に元気すぎるくらいだ
熱でもあるかとでこを触ろうも
全く熱くなく逆に
冷えているようであつた
「嗚呼お前は可笑しくなつたんだな」
隊長は苦笑いしながら
どういう感情であるのか読めぬ
分からぬ顔で言うた
その日から青年は
日に日に皮膚がただれていき
中指と薬指が無くなつていた
骨は肉に紛れ見えずに
状態の回復は見られない
右手をあまり使わず
殆ど左手で日常を過ごしていつた
銃も余り不便無く使つて
周りにも着いてきている
其奴は目の色が濁つてきていて
まるで屍の様だつたが
彼奴自身は元気満々だつた
其れから彼奴の周りのやつも
「皮膚が腐ってる」
「足に痣の様なものがある」
「足の指が青い」
などの報告が見られた
どいつもそれ以外は痛くも
何の変哲もないらしい
何が原因なのか
今の状況ではよく分からぬ
其れからの青年は
どんどん溶けていき
右腕全体が赤黒く
変色していつて
それでも奴自身は元気な様子
あの日から青年は
戦いに積極的になつた
何時もより多く敵を倒し
打ち倒し指した
その姿は狂気的であり
人間ではない様だつた
「彼奴は怪物だ」
「前線に立つバケモノだ」
「本当に彼奴は味方なのか」
なんとでも言われた
其れから彼奴はそこらにいる
敵共を倒していき
その戦いは終戦していつた
彼はきつと英雄として
名をあげてゆくのだろうか
それとも見た目でバケモノと
罵られ続けるのだろうか
其れも今は分からぬ終まい
彼奴は終戦を知らせられて真つ先に
隊長の後ろを突いた
其奴を後ろから見ていると
何となく彼奴が本当の意味で
なぜバケモノと呼ばれているのか
その理由がわかつた気がする
其奴は隊長の背を刺し
その後も兵隊共を刺して撃って倒して
敵にした様になぎ倒していつた
僕はこの戦いで死ねない
あの子を救う為に
其れには他の者の生を
奪ったとしても
彼奴は他の者倒してゆき
目の前の彼の周りには
凄惨な死体と
其奴らの血だけだつた
其奴の目は灰色に濁つていて
死人が人を自身の様にしている
そんな絵ができていた
僕は戦時で活躍は出来なかった
だとしても強い方だと思う
其奴が倒した奴が持つていた
銃を手に取り其れを
元仲間の彼奴に向けた
其奴はこちらを見ていたが
目は見ていなかつた
僕は引き金をひいた
その行動は
吉と出るか凶と出るか
鬼が出るか蛇が出るか
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