第12話 探索者不足
この世界にもゲテモノハンターと呼ばれる者たちが存在し、およそ食用とは思えないモンスターの肉などを食していたりする。
しかし、そんな様々な経験を誇る彼らからしても、ゴブリンの肉は食用には向かないという評価に落ち着く。
「くすんだ緑色という見た目。肉の臭みと表現するのも憚られる食欲を減衰させるような悪臭。頬張った瞬間口一杯に広がる苦味…」
「うん。やっぱり無理じゃないかな?」
福岡のダンジョンに向かう準備をしつつ、ゴブリンの美味しい調理法を探していた優梨花であったが、そもそもゴブリンを食べようとする者自体が殆んど存在していなかった。
そんな中、唯一見つけた食レポブログに掲載されていたのは、見ただけで食べないでおこうと思わせる、啓発文紛いのレポートである。
その結果を半ば予想していた秀樹は、優梨花の様子を伺う。
秀樹としては優梨花も一緒に福岡に着いてきてくれると言ってくれたのは嬉しいが、ゴブリンが食材に思えない状況では、優梨花は非力な生産職の1人である。
であれば秀樹1人で福岡へ行くことも考えなければならない。
しかし優梨花は、秀樹の予想に反し、とてもイキイキとした様子で調理方法についての考察を始めていた。
「ゴブリンの肉は腐敗してないのよね…討伐した探索者が食用の想定をしてないなら血抜きが出来ていなかった可能性も。後はゴブリンは雑食なのよね。そのせいで臭みの強い肉に、それなら生まれたばかりのゴブリンなら…それと調理法を工夫すれば」
「この表情、僕たち探索者が高難度のダンジョンに挑むときに似ている。楽しそうだ…」
根っからの料理人である彼女にとって調理が難しい食材を使って試行錯誤する時間は、まさに至福の時間なのであった。
◆◆◆
ゴブリンの調理法に頭を悩ませる優梨花を連れ、協会の転送システムを使い福岡の協会支部にやってきた秀樹たちは、取り敢えず現在の状況を把握すべく知り合いの探索者や協会職員たちを探し情報収集に動く。
すると状況は、秀樹が想定していたよりも逼迫していることが判明した。
ゴブリン討伐と言うことで探索者集めに苦労するとは思っていたが、予想以上に探索者が少ない。
「噂ですが、ダンジョンブレイクの前兆が観測された時点で『六花』が対処しようとしたらしいですよ」
「対処って言っても『六花』は今、海外遠征している最中でしょ?」
「はい。ですがここの支部長が『六花』に無茶な要求をしたらしく、それに怒った『六花』の連中が今回の件から手を引いて遠征に」
「…なるほど。無茶な要求については分かる?」
「そこまでは。ですがどうせ、ダンジョンブレイクが発生するまで対処するなとかじゃないですか?」
ダンジョンブレイクは基本的には前兆が観測された時点での対処が望まれる。対応が遅れれば遅れるほど危険度は高まるからである。
しかし、中にはわざとダンジョンブレイクが発生するまで動かず、その後に対処する事で功績や名声を稼ごうとする悪どい者もいる。
今回、それが支部長であったようだ
「でも探索者は兎も角、協会の評価システムなら、発生後の対処より事前に対処する方が評価が高い筈じゃ?」
「そこら辺は。中々黒い噂の多い人なので。まあそんな事があったせいで、他地区の大手ギルドは『六花』の縄張りを荒らせないと動けず、ここら辺を拠点に活動してる人たちも『六花』に眼を付けられたくないと…」
「最悪だね」
支部長が『六花』に謝罪なりをすれば、探索者不足はある程度解決しそうではあるが、内々での話であるため協会側からの謝罪は無いだろう。
「…なるほど。公にはなっていないけど、協会側の失態だから各支部から応援の職員がわんさか招集されたって訳か。これは優梨花には言えないな」
1人の、しかも本来は責任を負う立場の人間の失態を隠すために、青葉や勇作などの知り合いが迷惑を被っていると知れば優梨花は激怒するだろう。
ただでさえ、ゴブリンに『調理』スキルが通用するか分からない状況下で別の事を考えて欲しくは無い。
とはいえ、状況が状況である。『氾濫』が発生し実際に地上に被害が出るなどの実害が生じるまでは、この探索者不足は解消されないかもしれないと思う秀樹なのであった。
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