第17話 再び


疲労に抗えず、紬はベッドの上で眠っていた。


けれどその眠りは浅く、不安定で……胸の奥には、何かに怯えるような重苦しさがずっと渦巻いていた。



ふと——。


カタ……と、かすかな音が部屋の中に響いた。


続けて、ギィ……ギィ……と扉が軋むような音。風もないのに、窓がわずかに揺れている。



「…………っ」



夢と現実の狭間で目を覚ました紬は、ぼんやりと天井を見つめた。


その耳に、耳鳴りのような、遠くで囁くような雑音が入り込んでくる。


ひとつの声ではない。

たくさんの声が重なって、意味を持たないノイズとなって、頭の中に押し寄せる。



(やだ……また……)



カタカタと小さく震える窓。


ガタ……と一瞬、大きく揺れた。


なのに、カーテンは一切なびかず、部屋の中は不気味なほど静か。


外は闇に包まれ、扉の外からは何の音も聞こえない。


けれど、この部屋の中だけが、何か“異なるもの”に支配されているようだった。


紬は声を上げることもできず、ただ毛布をぎゅっと握りしめ、身を丸める。



(どうして……誰も……)



助けを呼びたくても声が出ない。


恐怖と寒さに身体は震え、時間の感覚さえ曖昧になる。


やがて音は徐々に遠のいていき、部屋に静寂が戻った。


けれど紬の心臓は早鐘を打ち続け、眠気などどこかへ消えていた。


彼女はそのまま、震えながら夜をやり過ごすしかなかった——。

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