第3話 召喚〜レニオス視点〜



静寂。



──だが、それはほんの一瞬のものだった。



召喚陣の中に現れた少女は、

まるで息をするのも忘れたかのように立ち尽くしていた。




美しい──


そう思った。だが、それ以上に、妙だった。



(喋らない。いや……喋れない?)



呼びかけようと一歩踏み出した時

彼女の唇が微かに動いた。



声は出ていない。



それなのに…

何かを言おうとしているのが分かった。



(恐れている? それとも、混乱している?)



レニオスはじっと…

その瞳を見つめた。



…深い。



何かを抱えている。



だが、まだ見えない。




「レニオス殿、どうされましたか?」



背後から誰かが問う。



無言の少女に不安を覚えたのだろう。



だが…

レニオスは応えずに視線を逸らさなかった。


(何かがおかしい。だが今は……まだわからない)

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