第6話「延長戦突入!春までいてええんか!?ファーwww」

年越し雑煮イベントも無事クリアして、

「ほなそろそろ出所かな〜」って思ってたワイに、呼び出しかかる。



係員「佐野さん、ちょっと来てくれますかー」

ワイ「え、もう出所っすか?」

係員「えー…ちょっと“延長”の通達が来てまして」

ワイ「ファーーーーーwww」



出された紙にはこう書いてあった:


「社会復帰先調整中のため、行政判断により留置期間を10日延長」



ワイ「つまり、帰る場所がないと春までいてええんか!?」

係員「……そういうことですね(困惑)」

ワイ「……この国、ぬくもりの与え方バグってへんか?」



戻ったら、同室のジジイに言われた。


ジジイ「ほう、お前も“春組”か」

ワイ「春組って何やねん」

ジジイ「ワイも去年の冬、2月中旬までおったで」

ワイ「常連おるんかこの沼…」



延長が確定したことで、逆に気持ちが楽になる不思議。


作業は毎日同じ。

タオル畳んで、廊下拭いて、昼寝して、雑談して、メシ食って寝る。

なんやろこの生活……RPGで“町の宿屋”にずっと泊まり続けてる感じ。



2月の終わり頃。

「春の足音」とか言われてもな、窓ないし、ようわからんのやけど?

でも、換気扇の風がちょっとだけマイルドになってて笑った。


中村くん(20代の収容者)がつぶやいた。


「このまま、ずっとここにいたいっすね」

ワイ「な?」

中村「なんも選ばなくていいって、めっちゃ楽じゃないっすか」

ワイ「それな。“何者にもなれない奴”には天国やでここ」



でも、どっかで分かってんねん。

この“越冬シェルター”、ずっとはいられへん。

このぬるま湯も、期限付き。


春が来る。

それは、終わりが来るってことや。

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