第6話 「魂の共鳴」

翌朝、東の空がようやく白み始めた頃、ハヤテは道場で一人黙想していた。昨夜、リリィとの力の共有を試みた時の感覚が、まだ体に残っていた。温かく、眩しい彼女の魔力が彼の中に流れ込む感覚—それは不思議なほど心地よく、同時に畏怖すべきものだった。

「もう起きていたか」

振り返ると、守が立っていた。老人の顔には疲労の色が濃く出ていたが、目は鋭く輝いていた。

「眠れなかったんだ」ハヤテは正直に答えた。

守は孫の隣に座った。二人は暫し、朝焼けを眺めていた。

「ハヤテ、お前に見せたいものがある」

守は懐から古ぼけた写真を取り出した。それは若い日の守と、金髪の美しい外国人女性が並んで写っているものだった。二人の間には強い絆が感じられる。

「これは…」

「ああ、三十年前の私とエリザベスだ」守は懐かしむように写真を見つめた。「『月蝕の門』を封印した直後に撮影したものだ」

ハヤテは写真を受け取り、じっくりと見た。祖父の若い姿は今のハヤテに似ており、エリザベスの面影はリリィに通じるものがあった。

「二人とも疲れているように見えるけど、どこか晴れやかだな」

「そうだな」守は微笑んだ。「命を懸けた戦いを終え、新たな一歩を踏み出せることへの安堵があった」

ハヤテは言葉を選びながら尋ねた。「じいちゃんとエリザベスさんは…その後、どうして一緒にならなかったの?」

守は長い間黙っていた。やがて静かに語り始めた。

「『血の誓約』によって、私たちの魂は確かに結ばれていた。しかし…」

彼は一度言葉を切った。

「私たちには別の使命もあった。私は相良家の当主として日本に残り、エリザベスは星乃家の技を伝えるため再びイギリスへ戻る必要があった。二つの血脈を純粋に保つための…苦渋の決断だった」

「でも、それは不幸だったんじゃないか?」ハヤテは思わず言った。

守は穏やかに首を振った。「不幸ではなかった。共に戦った日々、魂を通わせた絆—それは何物にも代えがたい宝だ。たとえ離れていても、私たちの心は常に繋がっていた」

彼は遠くを見つめた。

「そして、私たちはそれぞれ家族を持ち、次の世代を育てた。お前の父を、そしてリリィの母を」

「父さんと、リリィのお母さん…」ハヤテは自分の父が早くに他界していたことを思い出した。リリィの母親についても、詳しく聞いたことはなかった。

「そう。彼らもまた、知らぬ間に『血の誓約』の一端を担っていたのだ」守は写真を手に取り直した。「そして今、お前たちの番だ」

ハヤテは重い責任を感じながらも、静かに頷いた。「俺たちは、じいちゃんたちと同じ選択をしなければならないのか?」

守は真剣な表情でハヤテを見つめた。

「それはお前たち次第だ。時代は変わった。私たちの時代の制約が、必ずしもお前たちを縛る必要はない」

ハヤテは意外な答えに驚いた。

「でも、二つの血脈が…」

「大切なのは血脈そのものではない」守は力強く言った。「魂の調和、『影』と『光』の均衡だ。それさえ保てれば、形はどうあれ構わない」

守は立ち上がり、道場の奥へと歩き始めた。

「さあ、朝食の後に最終段階の特訓を始めよう。時間がない」

ハヤテは写真を守に返し、静かに立ち上がった。祖父の背中を見つめながら、彼は決意を新たにした。自分とリリィの未来は、自分たちで切り開くものだと。

________________________________________

朝食を終えた四人は、相良家の最奥にある秘密の間に集まった。部屋の中央には、昨日よりもさらに複雑な魔法陣が描かれていた。

「これが『血の誓約』の真の儀式の場だ」守が厳かに言った。「代々の相良と星乃が、ここで魂を結んできた」

エリザベスが魔法陣の周りに七つの蝋燭を配置し、一つずつ火を灯していく。その炎は通常の赤や橙ではなく、青白い光を放っていた。

「今日は、完全な『血の誓約』を行うわけではない」エリザベスが説明した。「最終的な結びつきのための準備段階よ」

「真の儀式は『月蝕の門』が最も開きやすい日に行われる」守が続けた。「おそらく、それは近いうちに訪れるだろう」

リリィは緊張した様子で魔法陣を見つめた。「どうして七つの蝋燭なの?」

「七つは完全数」エリザベスが答えた。「七つの惑星、七つの色、七つの音階…宇宙の調和を表す数よ」

「それに」守が付け加えた。「七は『門』の封印に必要な力の数でもある。『影』と『光』の五つの属性に、魂と体を加えた七つだ」

二人の若者は、魔法陣の前に立った。

「まず、服を脱ぎなさい」エリザベスが言った。

「え?」リリィは驚いた表情になった。

「儀式衣に着替えるのよ」エリザベスは笑みを浮かべながら、壁の棚から二つの白い衣装を取り出した。「これを身につけて」

二人はそれぞれ別の部屋で着替えた。儀式衣は純白の素材で作られ、古代の紋様が刺繍されていた。ハヤテの衣には黒い糸で龍の模様が、リリィの衣には青い糸で鳳凰の模様が描かれていた。

部屋に戻ると、守とエリザベスも同様の儀式衣に着替えていた。

「では始めよう」守が言った。「まずは二人で魔法陣の中央に立ちなさい」

ハヤテとリリィは言われた通りに魔法陣の中心へ進んだ。

「向かい合って、互いの右手を取りなさい」エリザベスが指示した。

二人は向き合い、右手を取り合った。不思議と緊張はあるものの、恥じらいはなかった。それは儀式の厳かな空気が、二人を包んでいたからかもしれない。

守が短刀を取り出し、ハヤテに渡した。「血を交わす必要がある」

ハヤテは短刀を受け取り、自分の左手の人差し指に小さな切り傷をつけた。血が一滴、二滴と垂れる。彼は刃をリリィに渡した。

リリィも同様に左手の人差し指に傷をつけ、血を滲ませた。彼女は少し痛みに顔をしかめたが、すぐに表情を引き締めた。

「左手を重ね合わせなさい」守が言った。「血と血が触れ合うように」

二人は左手を重ね、指から滲み出る血が混じり合った。

エリザベスが古代の言葉で詠唱を始めると、魔法陣が青く輝き始めた。守も同様に、古い忍の言葉で何かを唱えた。

「今度は、互いの中に力を流しなさい」エリザベスが言った。「昨日よりも深く、強く」

ハヤテは目を閉じ、自分の中の「気」をリリィへと送り始めた。同時に彼女の魔力も、彼の中へと流れ込んでくる。

昨日よりもはるかに強い感覚だった。彼の中に流れ込む魔力は、体中を温かく、しかし激しく駆け巡る。それは時に痛みすら感じるほどの強さだった。

リリィも同様に、ハヤテの「気」が体を満たす感覚に戸惑いながらも、それを受け入れようとしていた。

「抵抗せず、流れに身を任せなさい」エリザベスが静かに導いた。

二人の周りには、黒と青の光が渦巻いていた。それらは次第に混じり合い、紫に近い色へと変化していく。

「今度は、互いの目を見つめなさい」守が指示した。

ハヤテとリリィは目を開け、互いの瞳を見つめた。その瞬間、二人は驚きの表情を浮かべた。

ハヤテの黒い瞳の中に、青い光が宿り始めていた。同様に、リリィの青い瞳にも、黒い影が現れていた。それは互いの力が、魂レベルで交換されていることの表れだった。

「すごい…」リリィが息を呑んだ。

彼女の声を聞いた瞬間、ハヤテは不思議な感覚に襲われた。それは単に耳で聞いた言葉ではなく、彼の魂に直接響くものだった。

「リリィ…お前の声が、俺の中で聞こえる」

「私も!」彼女は驚きに目を見開いた。「ハヤテの心の声が聞こえる」

守とエリザベスは満足げに頷いた。

「魂の共鳴が始まった」守が言った。「これが『血の誓約』の第一段階だ」

魔法陣の光がさらに強くなり、七つの蝋燭の炎も高く燃え上がった。部屋全体が青白い光に包まれる。

その時、突然激しい風が吹き荒れ、窓が開け放たれた。室内の光が揺らぎ、魔法陣の外側に歪みが生じ始めた。

「何かが来る!」エリザベスが警戒の声を上げた。

魔法陣の外側の空間が歪み、そこから青い炎の生き物が現れ始めた。昨日の林間学校で見たものと同じだ。

「異界の存在だ!」守が叫んだ。「儀式が彼らを引き寄せた!」

「どうすれば…」リリィが恐怖に声を震わせた。

「儀式を続けろ!」守は短刀を手に取り、炎の生き物に立ち向かった。「我々が時間を稼ぐ!」

エリザベスも魔法を放ち、次々と現れる炎の生き物を押し返す。しかし、それらは消えては新たに現れ、その数は増える一方だった。

「リリィ、恐れるな」ハヤテが彼女の手をしっかりと握った。「俺たちは一緒だ」

リリィは恐怖を押し殺し、頷いた。「うん…私たちなら、できる」

二人は再び目を閉じ、互いの力を流し合った。周囲の戦いの音、炎の唸り声が聞こえる中でも、二人の間に流れる力は途切れることなく、むしろより強く結びついていった。

「ハヤテ…」リリィの声が彼の魂に響いた。「私、何か見えるの」

心の中で、二人は同じビジョンを共有していた。それは彼らの前に広がる異世界の風景だった。青く光る星々、紫色の空、そして地上には奇妙な建築物が並ぶ。そしてその中央には、巨大な塔のような構造物—『月蝕の門』の本体と思われるものがあった。

「あれが…『門』か」ハヤテも心の中で呟いた。

その時、彼らの視界に異形の存在が現れた。それは人型だが、完全に青い炎で構成された存在。その姿は昨日彼らに警告を発した光の存在よりも巨大で、威圧感があった。

「見つけたぞ、若き守護者たちよ」炎の存在は直接彼らの魂に語りかけた。「お前たちの試みは無駄だ。『門』はすでに開きつつある」

「誰だ、お前は!」ハヤテが問いかけた。

「私は『炎の王』。『月蝕の門』の向こう側を統べる者だ」

その存在は両手を広げた。するとビジョンの中の風景が変わり、青い星々が落下し始め、大地が割れ、建物が崩れる様子が見えた。

「見よ、我が世界の終焉を。そして次に迫る、お前たちの世界の運命を」

ビジョンはさらに変わり、今度は現実世界—東京の街並みが映し出された。そこでも同様に、空から青い光が降り注ぎ、建物が崩れ、人々が逃げ惑う姿が見えた。

「これは…未来の光景なのか?」ハヤテが恐怖を感じながら問うた。

「これは既に始まっていることだ」炎の王は冷たく言った。「『月蝕の門』は開くべくして開く。お前たちにそれを止める力はない」

「嘘よ!」リリィが叫んだ。「私たちには、それを封じる力がある!」

「なぜそこまで抵抗する?」炎の王は彼らに近づいた。「『門』が開けば、お前たちは想像を絶する力を手に入れる。この世界を支配することさえできるのだ」

「そんなもの望んでいない」ハヤテは毅然と答えた。「俺たちは世界を守るために戦う」

「愚かな…」

炎の王がさらに近づこうとした時、突然ビジョンの中にエリザベスと守の姿が現れた。二人は若い姿で、三十年前の彼らだった。

「触れるな、我が孫に」守が叫んだ。

「二度と同じ過ちは犯させない」エリザベスも力強く言った。

炎の王は二人を見て、一瞬たじろいだ。

「お前たち…前回の封印者か。だが、もはやその力も弱まっている」

「我らの力は弱くとも、次世代は強い」守が言った。

「光と影の力は、永遠に続く」エリザベスも加えた。

二人の姿が輝き、ハヤテとリリィを守るように立ちはだかる。

「ハヤテ、リリィ」守の声が響いた。「今こそ力を合わせるのだ」

ハヤテとリリィは互いの手をより強く握り、深い呼吸をした。

「リリィ」ハヤテが呼びかけた。「俺の力を受け取ってくれ」

「ハヤテ」リリィも応えた。「私の力を、あなたに託すわ」

二人の間の力の流れがさらに強まった。ハヤテの体を黒い「気」が、リリィの体を青い魔力が満たしていく。そして次第に、その色は混じり合い、紫の光となって二人を包み込んだ。

ビジョンの中で、炎の王が苦しげな表情を見せた。

「この力…だが、まだ完全ではない!」

炎の王が一撃を放ち、それが二人に向かって飛んでくる。しかし、守とエリザベスの姿がそれを防いだ。

「行け!」守が叫んだ。「今のうちに!」

ハヤテとリリィは力を振り絞り、共に詠唱を始めた—それはまるで二人の魂から自然と湧き上がる言葉だった。

「影よ、光よ、我らの血に宿りし力よ」

「星の導きと、地の強さを借りて」

「我ら二つの魂、ここに一つとなり」

「『月蝕の門』の闇を照らさん」

二人の周りの紫の光が爆発的に広がり、ビジョンの中の炎の王を押し返した。

「まだだ!これで終わりではない!」炎の王の叫びが遠ざかっていく。

ビジョンが消え、二人は現実世界に引き戻された。部屋には守とエリザベスが立っており、炎の生き物たちは消えていた。

「成功したのね」エリザベスは安堵の表情を見せた。

「ああ」守も頷いた。「第一段階の共鳴が完了した」

ハヤテとリリィは互いを見つめた。彼らの瞳には、まだ相手の力の色が宿っていた。さらに、左手の傷跡は消えていたが、その代わりに小さな紋様—龍と鳳凰が絡み合う紋様が浮かび上がっていた。

「これが…『血の誓約』の証か」ハヤテは左手の紋様を見つめた。

「魂の結びつきの証よ」エリザベスが説明した。「これで二人は常に繋がっていられる」

「だが、これはまだ始まりに過ぎない」守の表情は厳しかった。「『炎の王』の姿を見た以上、状況は私たちが考えていたよりも深刻だ」

「どういうことなの?」リリィが尋ねた。

「『炎の王』は異世界の支配者」エリザベスが説明した。「彼が直接干渉してくるとは…」

「彼が言っていた『世界の終焉』って何?」ハヤテが尋ねた。

守とエリザベスは互いに目を合わせ、何かを確認し合うように頷いた。

「『炎の王』の世界は、すでに崩壊の危機にある」守が静かに言った。「だからこそ、彼は『月蝕の門』を通じて我々の世界へ来ようとしているのだ」

「彼らの世界の力が尽きかけている」エリザベスが続けた。「新たなエネルギー源として、この地球を狙っているのよ」

「でも、私たちの世界だって危険になるじゃない!」リリィが声を上げた。

「そう」守が厳しい表情で頷いた。「だからこそ、我々は『門』を封じなければならない」

「だけど、彼らの世界が滅びるなら…」ハヤテは考え込んだ。「それはつまり、向こうの存在も全て…」

「そこが難しい倫理的問題だ」守は深い溜め息をついた。「我々の世界を守るため、彼らの世界を見捨てるべきなのか」

重い沈黙が部屋に下りた。

「他に方法はないの?」リリィは小さな声で尋ねた。「両方の世界を救う方法は?」

エリザベスが孫娘の肩に手を置いた。「それを探すのも、あなたたちの使命かもしれないわね」

「だが、まずは『月蝕の門』の完全な開放を防がなければならない」守が言った。「それが最優先だ」

四人は静かに頷き合った。今日の儀式で、状況はより複雑になったことを全員が理解していた。単なる封印の問題ではなく、二つの世界の存亡がかかっているのだ。

「休息を取るんだ」守が言った。「明日から最終段階の準備を始める」

ハヤテとリリィは互いを見つめた。彼らの運命は、今日の儀式でより深く結びついた。それは重い責任であると同時に、彼らにとって大きな力の源でもあった。

________________________________________

次の日の朝、ハヤテは奇妙な感覚で目覚めた。体の中に、これまでにない力が満ちているのを感じる。それはリリィの魔力が彼の中に宿った証だろう。

同時に、彼は何かを感じ取っていた—リリィの存在を。彼女がどこにいるのか、どんな気持ちでいるのかが、おぼろげながら伝わってくる。

「魂の共鳴…か」

彼はベッドから起き上がり、窓の外を見た。空には不自然な雲の渦が見え、時折青い光が走る。一般の人々には単なる珍しい気象現象に見えるだろうが、ハヤテにはそれが「門」の兆候であることがわかっていた。

朝食を取りに台所に向かうと、そこにはすでにリリィがいた。彼女は昨夜から相良家に泊まっていた。

「おはよう」リリィは微笑んだ。「あなたが起きたのを感じたわ」

「ああ、俺もお前を感じた」ハヤテも微笑み返した。

二人の間には、昨日までとは違う親密さがあった。それは単なる恋愛感情を超えた、魂レベルの結びつきだった。

「守さんとおばあちゃんはすでに道場にいるわ」リリィが言った。「朝食の後で合流しましょう」

二人は簡単な朝食を取り、道場へと向かった。

道場では、守とエリザベスが地図を広げて何かを議論していた。

「おはよう」守が二人に気づいて顔を上げた。「今日は最終段階の説明をする」

四人は地図の周りに集まった。それは東京の地図だったが、いくつかの場所に印が付けられていた。

「これが『月蝕の門』に関連するポイントだ」守が説明した。「この五つの場所に『結界石』が埋められている。これらが『門』の開放を食い止める最後の砦となる」

五つの場所は、東京の異なる地域に散らばっていた—新宿御苑、浅草寺、東京タワー、皇居、そして最後は相良家の近くの森だった。

「『結界石』とは?」ハヤテが尋ねた。

「古来より異界との境を守るために設置された石柱よ」エリザベスが答えた。「本来、これらが『月蝕の門』の開放を防いでいたのだけど…」

「三十年前、私たちが封印した時に、力が弱まっていた」守が続けた。「今はもう、ほとんど機能していないだろう」

「そこで、私たちがすべきことは?」リリィが尋ねた。

「この五つの『結界石』に、お前たちの力を注ぎ込むんだ」守が言った。「五つの属性—水、火、風、地、空—それぞれに対応する力で」

「でも、どうやって?」ハヤテは疑問を抱いた。

エリザベスが小さな袋から五つの水晶を取り出した。それらは透明だが、光を浴びると七色に輝いた。

「これらの『星の結晶』に、あなたたちの力を込めるのよ」彼女は説明した。「そして、『結界石』の元に埋め込む」

「『星の結晶』…」リリィは美しい水晶を手に取った。「おばあちゃん、こんなものをどこで?」

「星乃家に代々伝わるものよ」エリザベスは微笑んだ。「『月蝕の門』の封印のためだけに使われる」

「五つの場所を巡り、五つの属性の力を込める」守が説明を続けた。「それが完了したとき、最終的な封印の準備が整う」

「開始は今日だ」守が厳しい表情で告げた。「もう時間がない」

ハヤテとリリィは互いを見つめ、静かに頷いた。

「最初はどこから行けばいい?」ハヤテが尋ねた。

「東から西へ」エリザベスが言った。「浅草寺から始めて、皇居、東京タワー、新宿御苑、そして最後に森へ。『水』から始まり、『空』で終わる」

「それぞれの場所では、あなたたちの力を共鳴させる必要がある」守が付け加えた。「すでに昨日の儀式で基本はできているはずだ」

「ただし注意が必要だ」守の表情がさらに厳しくなった。

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