第八話「ごめんねのリズム」
思春期の私は、ときどき自分の繊細さが嫌になることがあった。
ある日、おじさんの口調やしぐさに苛立ちを覚え、強い言葉で突き放してしまった。
翌日から数日、おじさんは姿を見せなかった。
ようやく再会したある夕暮れ、彼は何も聞かず、昔と変わらぬ優しい声で「ピアノ、続いてる?」とだけ訊いた。
私はただ、何度もうなずいた。
音を合わせるのに言葉はいらないことを、おじさんは音楽で知っていたのだ。
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