第六話「靴音だけでわかる人」

放課後の商店街で、私はひとり立ち読みをしていた。


すると、向こうから「コッ、コッ」と小さな音が近づいてくる。

私は本を閉じる前に、なぜかもう確信していた。


あの靴音は、おじさんのものだ。


姿を確認する前にわかるほど、私の中にあの人の歩き方は染みついていた。


すれ違いざま、おじさんは「背が伸びたね」と一言だけ言った。

私は「…おじさんも」と応えたが、彼は肩をすくめて笑っていた。


人は、音にも形が宿る。そして、それが心の中にいつまでも残ることがある。

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