第4話 夏祭り
わたしは心人君と一緒に浴衣姿で道を歩く。
「色んなお店があるんだね」
わたしはあたりを見渡した。
カラオケの後、わたしは心人君と一緒に夏祭りに行く約束をしたのだ。
今日がその祭りの日。
高台から音を響かせる太鼓。
提灯の灯りが屋台の下を照らし、人の賑わいが溢れている。
ずらりと並ぶ屋台に目を輝かせ、わたしと心人君は瓶ラムネを買った。
「さぁ、行こっか」
嬉しさに笑顔を浮かべ、わたしは彼と共にとある場所へ向かう。
とある場所、それは祭りが開かれている広場の近くの野原だった。
もうすぐ花火が上がるとの話。
わたしは建物の邪魔がはいらないように見渡しの良いこの場所を選んだのだ。
花火が上がるまでの待ち時間。
ラムネでも飲んでいたが、互いに落ち着かない。
緊張しているのだ。
お互いにもじもじとしていると、その時はきた。 ひゅー、と音がなる。
花火が空に線を描いて登り上がり始めた。
「心人君、見て、花火だよ!」
目を輝かせる。
花火はやがて上に達すと、一輪の花のように明るい光を放ち、蕾を咲かせた。
パン、と小さな音と共に明るく、カラフルな色が空に灯る。
弾けて落ち、また花火は舞い上がる。
夏の蒸し暑さも、鬱陶しい虫の声も。
全てがその光に溶けるような気がした。
心人君はこちらを向く。
淡い期待と、緊張に胸の鼓動が赤くなるのを感じる。
花火の実らない暗がりに、わたしは目を閉じてそれに委ねた。
彼の唇が触れる。
男の子らしい、しっかりとした硬い唇が触れる。
不思議な時間だった。
甘くて、固くて、柔らかくて、綺麗な。
二人の想いが、気持ちが絡み合い、溶けていく。
全部が、全部が夢みたいだった。
初めてのキスが、大好きな人とだなんて。
終わらないでほしい、この時間がずっと続いてほしい。
大好きなんだ、大好きなんだ。
そうして濃厚な時は花火とともに続く。
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