破壊の戦車
千景の耳に、異界の生物たちの不気味な足音が近づいてくるのがはっきりと聞こえた。その姿は、目に見える範囲に十体ほど。身長は二メートル近く、角のようなものを生やし、顔は異常に大きく、血走った目が鋭く光る。鱗状の皮膚に覆われたその体は、どこか爬虫類のような外見をしていた。
「なんて奴らだ…」
千景は冷静に深呼吸をし、三八式歩兵銃をしっかりと肩に構えた。これまで数多くの戦闘を経験してきたが、この手の敵に出会うのは初めてだった。だが、今更恐れることはない。彼女には戦う力がある、そして相棒のセキがいる。
セキは千景の肩から飛び降り、戦車の周りをぐるりと回りながら警戒を強めていた。その鋭い眼差しと軽やかな動きからは、戦闘の経験がうかがえる。
異界の生物たちは、少しずつ千景を取り囲み始める。その時、先頭に立っていた一体が低い唸り声を上げ、鋭い爪を千景に向けて振りかざした。
「来るか!」
千景は素早く反応し、三八式の引き金を引く。銃声が轟き、弾が異界の生物に命中した。その瞬間、銃剣が紅く染まり、千景の異能が発動した。連続攻撃のため、三八式歩兵銃の精度と威力が増し、第二発目、第三発目と次々と銃弾が敵を貫通していく。
だが、敵はそのまま倒れることはなかった。代わりに、激しく呻きながら反撃してくる。その姿からは、どこか物理的な強さと異常な耐久力がうかがえる。
「くっ…硬い!」
千景は少し眉をひそめるが、それでも冷静さを失わない。これまでの経験から、敵の動きを予測し、対処する術は身についていた。
その時、セキが一声鳴くと、素早く敵の背後を取る。セキの敏捷さは敵の不意を突くには十分だった。セキは飛び跳ね、異界の生物の腕をかすめるように爪を切りつけた。敵は怒声を上げてセキを追い詰めるが、その隙に千景が連続射撃を放つ。
「これで決める!」
千景の声が響く中、三八式歩兵銃が再び火を吹いた。最後の一発が、今度こそ敵の胸に命中し、異界の生物は力なく倒れ込む。倒れた体からは黒い血があふれ、周囲にひどい腐臭が漂い始めた。
「終わったか…?」
千景は息を整えながら周囲を見渡す。幸い、他の敵は近くにいないようだ。セキも無事に戻ってきて、肩で息をしながら千景を見上げていた。
千景は無言でセキを撫でると、再び戦車の方を見つめた。その異界の生物たちは、おそらく警戒していたが、戦車の内部にはまだ何か大きな力が潜んでいるように感じていた。
「この戦車、まだ何か隠されているはず…。」
千景は戦車の側面を再度調べることに決め、ゆっくりと車体の内側に向かう。
そのとき、異界の生物の死体の近くに、別のものが目を引いた。それは、破壊されているものの、まだ強い力を放っている奇妙な装置だった。
「これは…?」
千景は足を止め、その装置をじっくりと観察する。装置は、何かの動力源のように見えた。強力なエネルギーを放出し続けているものの、正体は不明だ。だが、それがこの異界の生物たちの存在に何か関係があることは確かだ。
「これも、この世界の謎の一部か…。」
千景はそれを触らないように慎重に調べ、手に入れた古びたメモを再び取り出した。メモに書かれた暗号と装置の形状が一致する部分があった。
「もしかして、これが鍵か…?」
メモの内容を思い出し、千景は少しだけ考え込んだ後、装置を取り扱う方法を見つける決意を固めた。これが自分の冒険の新たな手がかりとなるのかもしれない。
その時、再びセキが鳴き声を上げた。
「何か来る…!」
千景はすぐに周囲を警戒しながら、装置を背に隠し、次の動きを準備する。敵がまだ残っているのか、それとも新たな危険が迫っているのか、分からない。しかし、彼女はその時に備えなければならなかった。
次回予告:
千景とセキは、異界の生物を撃退し、奇妙な装置と暗号の謎を追い始める。しかし、その行動が新たな強敵を呼び寄せることに…。果たして、彼女は次なる脅威に立ち向かうことができるのか?
次回、「暗号の鍵」
千景は装置の秘密を解き明かすが、そこに待ち受けるのは、さらに強大な敵と未知の力。
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