暗号の鍵
千景は装置を慎重に手に取り、セキと共に再び周囲を警戒しながら、車体の陰に隠れるようにして進んだ。彼女の目は装置に釘付けだ。その表面には見たこともない文字が刻まれており、まるで異世界から来たような不気味な形状をしていた。
「これが鍵なのか…?」
千景は呟きながら、装置をじっと見つめる。彼女の手には、先ほど拾ったメモがある。それには、装置の使い方や暗号に関するヒントが記されていたが、まだその全容を理解することはできていなかった。
セキが鳴き声をあげ、再び周囲を警戒する。異界の生物たちが現れる気配はまだない。しかし、千景の直感は強く働いていた。何かが近づいている。
「急がないと…」
千景はメモを広げ、文字を再度読み返す。そこに書かれていたのは、「暗闇の中で光るものを探せ」という言葉だった。どうやら装置を起動させるには、何か特別な条件があるようだ。
その瞬間、背後からひどい音が響き渡る。
「きたか…!」
千景は素早く振り返り、三八式歩兵銃を構える。セキも警戒を強め、体を低くして潜む。
異界の生物たちの影が、うっすらと姿を現し始めた。その数は、先ほどの戦闘の倍以上だ。千景は息を呑んだが、冷静さを欠くことはなかった。何度も戦ってきた相手だ。この程度なら問題ない。
だが、よく見ると、その中に一体だけ異様に大きな影が混じっているのがわかる。それは、他の異界の生物たちよりも数段巨大で、無骨な外見をしていた。両手には、何か金属のような物を持っている。
「まさか…!」
千景は直感的にその姿を見て、それがただの異界の生物ではないことを悟った。目の前に現れたのは、まさに「銃を持った強敵」だった。
その存在に、千景の心臓が一瞬止まる。数歩前に進み、その姿をじっと見つめると、相手もまた不敵な笑みを浮かべていた。
「人…?」
その言葉は自然と口から漏れた。異界の生物と違って、目の前の敵は明らかに人間に近い形をしていた。だが、どこか不気味なほど異形を感じさせる姿だ。目の奥には冷徹な光が宿り、銃を構えている。
相手の銃は、明らかに人間のものだった。だが、どうしてこの異界に人間が?
千景はすぐに心を落ち着け、冷静に対策を考える。セキも肩で息をしながら、警戒を続けている。
「どうする、千景?」
セキが鳴いた。その言葉に千景は、鋭い決意を込めて答える。
「仕方ない…戦うしかない。」
千景はすぐに動き出す。三八式歩兵銃を肩に構え、撃つべきタイミングを計りながら、目の前の敵に向けて銃口を向ける。その時、敵が一歩前に出ると、千景は即座に引き金を引いた。
銃声が響き、銃弾は敵の胸に命中する。しかし、思ったよりもダメージは少ない。敵は少し後ろにふらつきながらも、銃を構えなおす。
「くっ…」
千景はすぐにリロードし、再度銃口を向ける。だが、敵は銃弾を避けるかのように動きながら接近してきた。その速度は驚異的で、千景は一瞬、その動きに圧倒される。
「よくも…」
敵は冷徹な声で言った。おそらく、この異界における「人間」を名乗る者だろう。その言葉には、ただの戦闘者ではない何かが感じられる。
千景は再度、銃剣を紅く染めながら、連続で銃弾を放つ。しかし、相手もまた動きが速く、銃弾をいくつか避けた。
「いけない…!」
千景は焦りを感じつつも、冷静に攻撃を続ける。セキもまた、隙を見て相手の足元を狙おうとしているが、相手の動きが早すぎて近づけない。
その時、相手が大きな一歩を踏み出した瞬間、千景は一気に距離を詰めた。銃を構え、敵の胸に向けて一発放つ。その銃弾は、ついに敵の心臓を貫通し、敵はその場で膝をついた。
「倒したか…?」
千景は息を整えながらも、周囲に注意を払う。だが、敵は完全には倒れていなかった。倒れたその体が、再び動き出すと、まるで死者のようにゆっくりと立ち上がった。
「まさか…死なないのか?」
千景は驚きと共に呟き、三八式歩兵銃を構え直す。しかし、この世界の異常さを再確認させられることになった。
その時、セキが再び警戒を強め、耳を立てて遠くを見つめる。
「何か、他にも…?」
千景は背筋をピンと伸ばし、急いで立ち上がる。彼女はこの先に待つ未知の敵に備えるため、すぐに行動を開始する。
次回予告:
千景は謎の「人間」を倒し、装置の秘密に迫る。しかし、倒したはずの敵が再び立ち上がる。異界の力は想像以上に強力で、千景はその真実に触れた。次なる戦いが、彼女を待ち受ける。
次回、「死者の再生」
千景は再生した敵に再度挑む。新たな謎が彼女を襲う中、異界の「力」がどこに繋がっているのかが少しずつ明らかに…。
時の狭間の銃声 @gorillasan
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