第2話 初めての魔物とチートの本気

夜の森は、まるで生き物のように息づいていた。 木々の間を抜ける風が葉を揺らし、遠くで鳴る獣の声が闇に溶け込む。 俺、佐藤悠斗は、村長の家から飛び出して、森の入り口に立っていた。 胸の奥で高鳴る鼓動が、恐怖じゃなくて興奮だと気づいた瞬間、俺はニヤリと笑った。


「よし、行くか」


自分に言い聞かせるように呟く。 隣には、エリスが少し緊張した顔で立っている。 金髪が月光に照らされてキラキラ輝き、青い瞳には不安と期待が混じっている。 その姿、めっちゃ絵になるんだけど、今はそんなことを考えてる場合じゃない。


「悠斗、ほんとに大丈夫? 魔物って、結構強いんだから……」


エリスが心配そうに言う。 その声に、俺はわざと大げさに胸を張ってみせた。


「大丈夫だって! 俺の【無限魔法】、めっちゃチートなんだから! どんな魔物だろうと、一撃でやっつけてやるよ!」


そう言ってウインクしてみたけど、エリスは「うわ、自信満々!」と笑いながら肩を叩いてきた。 その軽いノリが、なんだかこの状況を楽しくしてくれる。


「じゃ、行こうぜ。エリス、案内頼むよ」


「うん、ついてきて!」


エリスが先に立って、森の奥へ進む。 俺は彼女の後ろを歩きながら、頭の中で【無限魔法】のことを整理した。 なんでも、俺の想像力次第でどんな魔法でも使えるらしい。 火、水、風、雷、果ては空間操作とか時間停止とか? いや、さすがにそこまでは……いや、できるかも? 考えるだけでワクワクしてくる。




森の中は、思ったより暗かった。 月光が木々の隙間から差し込むけど、足元は根っこや石だらけで歩きにくい。 エリスは慣れた足取りで進むけど、俺は何度か転びそうになった。


「うわっ、ちょ、待って、エリス! 俺、都会っ子だからさ、こんな自然いっぱいのとこ慣れてないんだって!」


半分本気で叫ぶと、エリスが振り返ってクスクス笑った。


「都会っ子ってなに? 悠斗、ほんと面白いね。ほら、気をつけて歩いてよ」


その笑顔に、ちょっとドキッとした。 いや、だって、月明かりに照らされたエリス、めっちゃ美人なんだもん! でも、今は魔物を倒すのが先だ。 俺は気持ちを切り替えて、彼女の後を追った。


しばらく進むと、エリスが急に立ち止まった。 彼女が指さす先には、大きな影が動いていた。 二メートルはありそうな、狼みたいな姿。 でも、普通の狼じゃない。 背中に棘が生えてて、目が赤く光ってる。 めっちゃ怖え!


「それ、棘狼(ソーンウルフ)だよ。めっちゃ凶暴で、村の家畜を襲ってるの」


エリスが小声で説明する。 その声には、さっきまでの明るさが消えて、緊張が滲んでいた。


「了解。じゃ、俺の出番だな」


俺は一歩前に出て、深呼吸した。 頭の中で、魔法のイメージを固める。 シンプルに、でっかい火の玉で一撃! そう思った瞬間、手のひらから青白い光が溢れ、目の前にバスケットボールくらいの火球が現れた。


「うお、すげえ!」


自分で感動してしまった。 火球はまるで生きてるみたいに、俺の意志に従って宙を漂う。 棘狼がそれに気づいて、唸り声を上げながらこっちに突進してきた。


「悠斗、危ない!」


エリスが叫ぶけど、俺は冷静だった。 いや、冷静じゃなかったかもしれない。 ただ、なんか、めっちゃテンション上がってたんだ!


「くらえ、ファイアボール!」


叫びながら手を振ると、火球がものすごいスピードで棘狼に直撃した。 ドカーン! という爆音と共に、棘狼は炎に包まれて吹っ飛んだ。 地面に叩きつけられたその姿は、もう動かなかった。


「やった……!」


俺がガッツポーズすると、エリスが目を丸くして駆け寄ってきた。


「うそ、めっちゃ強い! 悠斗、ほんとにチートだね!」


彼女が興奮気味に言う。 その笑顔に、俺もつられて笑った。


「だろ? これが【無限魔法】の力だ!」


調子に乗って胸を張ると、エリスが「はいはい、すごいすごい」と笑いながら手を叩いた。 そのやり取りが、なんかめっちゃ楽しかった。




棘狼を倒した後、俺たちは村に戻った。 村人たちに報告すると、みんな大喜びしてくれた。 村長のおじさんは、感極まったみたいに俺の手を握って感謝してきた。


「悠斗殿、ありがとう! 君のおかげで村が救われたよ!」


「いや、こんなの朝メシ前っすよ!」


って、ちょっとカッコつけて言ってみた。 実際、めっちゃドキドキしたんだけどね。 エリスは隣で「朝メシ前って何?」と首を傾げてたけど、その表情がまた可愛いんだ。


その夜、村の広場で小さな宴会が開かれた。 魔物を倒したお祝いってことで、村人たちが手作りの料理やお酒を持ち寄って、みんなでワイワイやってた。 俺も、なんか異世界の料理(なんかポトフみたいなスープと、硬いパン)を食べながら、エリスと話してた。


「ねえ、悠斗。この世界、どう思う?」


エリスが、焚き火の明かりに照らされながら聞いてきた。 その瞳には、好奇心と、なんか少し深い光があった。


「どうって……まあ、ぶっちゃけ、めっちゃ面白いよ。魔法使えるし、魔物とかいるし、なんか冒険って感じでさ」


正直に答えると、エリスは微笑んだ。


「そっか。悠斗、なんかこの世界に馴染んでる気がするよ」


「そうかな? でも、俺、元の世界に戻る方法とか、考えないとな……」


その言葉に、エリスが少し目を伏せた。 なんか、寂しそうな雰囲気になって、俺は慌てて話題を変えた。


「まあ、それは置いといて! エリス、この世界の面白いとこ、もっと教えてよ!」


「うん、いいよ! じゃあ、まずは王都の話から!」


エリスが目を輝かせて話し始めた。 王都には、魔法学校とか、冒険者ギルドとか、めっちゃファンタジーな場所がたくさんあるらしい。 話を聞いてるうちに、俺の胸がどんどんワクワクしてきた。


「よし、決めた! エリス、俺、王都に行ってみる!」


突然の宣言に、エリスがびっくりした顔でこっちを見た。


「え、急に!? でも、王都って結構遠いよ?」


「大丈夫! 俺の【無限魔法】があれば、どんな距離だってへっちゃらだ!」


そう言って笑うと、エリスも「もう、悠斗ってほんと無茶苦茶!」と笑い返してきた。 その夜、俺は異世界での最初の夜を、こんな明るい気持ちで過ごした。




翌朝、俺は村長に相談して、王都へ向かうことを決めた。 村長は「道中気をつけるんだよ」と心配しながら、地図と食料をくれた。 エリスは、なんと一緒に来てくれるって! 「悠斗一人じゃ心配だし!」って、めっちゃ頼もしい理由だった。


「エリス、ほんとありがとな。なんか、めっちゃ心強いよ」


俺が素直に言うと、エリスはちょっと照れたみたいに笑った。


「ふふ、いいってことよ! それに、悠斗の魔法、もっと見たいし!」


その笑顔に、俺の心臓がまたドキッとした。 いや、ほんと、エリスってずるいよな。 こんな可愛い子と冒険なんて、俺の人生、急にラノベ主人公すぎるだろ!


準備を終えて、俺たちは村を出発した。 地図によると、王都までは森を抜けて、川沿いの道を進むルート。 途中で魔物が出るかもしれないけど、俺の【無限魔法】があれば問題なし! ……たぶん。


「よし、エリス! 冒険の始まりだ!」


俺が拳を上げて叫ぶと、エリスも「うおー!」とノリノリで拳を上げてきた。 その姿に、俺は思わず笑った。 この異世界、ほんと、最高かもしれない。




道中、俺たちはいろんな話をした。 エリスの村での生活とか、俺の元の世界の話とか。 エリスは、スマホとかテレビとかの話を聞いて、目をキラキラさせてた。


「え、動く絵が映る箱!? それ、めっちゃ魔法みたい!」


「いや、魔法じゃなくて科学なんだけどな。でも、この世界の魔法の方がぶっ飛んでるよ」


そんな他愛もない会話をしてると、突然、道の先に影が現れた。 今度は、さっきの棘狼よりでかい。 熊みたいな体に、鱗みたいな皮膚。 目が三つあって、めっちゃ不気味。


「うわ、なんだあれ!?」


俺が叫ぶと、エリスが冷静に答えた。


「鱗熊(スケイルベア)だよ。めっちゃ硬い皮膚で、普通の攻撃じゃ倒せないの」


「マジか……でも、俺の魔法ならどうだ!」


自信満々に言うけど、正直、ちょっとビビってる。 だって、あのサイズ、めっちゃ迫力あるんだもん! でも、ここでカッコ悪いとこ見せるわけにはいかない。


「よし、くらえ!」


今度は、雷をイメージした。 空から落ちる、でっかい雷撃。 手を振り上げると、ゴロゴロと音が響き、雲もないのに雷が落ちた。 バチッ! という音と共に、鱗熊が黒焦げになって倒れた。


「うそ、即死!?」


エリスが叫ぶ。 俺も自分でびっくりした。 いや、雷、強すぎだろ!


「ふ、ふはは! これが【無限魔法】の力だぜ!」


調子に乗って笑うと、エリスが「ほんと、チートすぎ!」と笑いながら肩を叩いてきた。 そのやり取りが、なんかめっちゃ心地よかった。




その後も、道中で何匹か魔物を倒しながら進んだ。 【無限魔法】のおかげで、どんな敵も一撃。 エリスは「悠斗、ほんと頼もしい!」って褒めてくれるけど、正直、俺自身が自分の力にちょっとビビってる。 だって、こんなチート、反則すぎるだろ!


夕方、川沿いのキャンプ地に着いた。 エリスが手慣れた手つきで火をおこし、俺は魔法で水を沸かしてスープを作った。 焚き火を囲んで、二人でご飯を食べる。 空には、見たことない星がキラキラ輝いてる。


「なあ、エリス。この世界、ほんとすごいな」


スープを飲みながら、素直に呟いた。 エリスは、星空を見上げながら微笑んだ。


「うん。怖いこともあるけど、綺麗なこともいっぱいあるよ。悠斗と一緒なら、もっと楽しい気がする」


その言葉に、俺の心臓がまたドキッとした。 いや、ほんと、エリス、天然で心臓に悪いって!


「そ、そっか。じゃ、もっと冒険楽しもうぜ!」


照れ隠しに明るく言うと、エリスも「うん!」と笑って頷いた。 その夜、俺は星空の下で、この異世界での冒険が、めっちゃ楽しみになってきたことを実感した。













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