第8話 職員室陥落
今度こそ化学教室の平戸を捕まえ、前嶋たちは特製の防弾チョッキを着て、職員室の前を通り、ピッチングマシンを擁して校長室へ向かっていた。
向かっている途中に「まじ平戸マッドサイエンディストやわwww」という声も聞こえてきた。生徒使用禁止のエレベーターに乗って再びグランドをつっきって、放送室、給食配膳室、職員室、校長室と、重要な部屋が集まっている廊下に向かい疾走していく。
ふだんは、廊下を走ってはいけないが、この際、生活指導もそれどころではない。まあパトカーが爆破されたのだから廊下を走るくらいはもはや瑣末なことだ。
職員室の前で立ち止まり、廊下側の扉や窓からは、コミュニケーションが取れないことを思い出し、廊下をまた元へ戻っていく。
再びグラウンドに回った前嶋が、職員室の窓の外から、
「先生、どうしますか?僕たちも鬼じゃないので、大人しくするならもう放水はしませんけど、まだ我々に抵抗するようなら、おーい」
奥の水鉄砲から水が教頭目掛けて飛んでいった。
「まだ、放水。続けますよ。」
先生軍は投降し、十分生徒たちに縛られた後、グラウンドで、温められていた。
「さあ、あとは校長か、」
前嶋たちは、ここで一度トイレ休憩をとった。この時点で10:30。
解放戦線と2年、3年が校舎の8割方を占拠していた。
先生軍はその事実を知らないまま、使えなくなる前にと、ひたすら内線で各教室に連絡をしていた。
「手が空いているなら助けに来てください‼︎」
帰ってくる言葉は
「手が空いてるなら助けに行ってるよ!」
とか
「ここの教室の先生は〜生徒に〜捕まってまーす。ばいばーい」
とか、それを外から前嶋は、先ほどまでニヤニヤしながら見ていたのである。
その前嶋が今は、せっせと備蓄倉庫から、毛布を持ってきているのである。先生たちは、もう勝ち目はないとわかっていた。
5月とはいえ、既に暑いので、日陰の風がよく通るところで、先生たちは、チーンとした顔で、凹んでいるようにも見えた。
後からたまたま通りかかった2年生と3年生に、その場を任せて、前嶋たちは校長室へと向かって行った。
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