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二月一四日は、煮干しの日である。
二が「に」、一を棒に見立てて「ぼ」、そして四は「し」で「にぼし」という単なる語呂合わせから来ているらしい。全国煮干し協会が制定した歴とした記念日である。
ということを千里さんに熱弁された。
「なんてことだー。私は煮干しの日を忘れていたのだよー」
いや、もっと忘れちゃいけないことは世の中のたくさんあるんじゃない?
たとえばバレンタインとかバレンタインとかバレンタインとか……。
「今日が煮干しの日だとわかればソリティアなんてやっている場合じゃないよ!」
彼女にとってのソリティアの優先順位が今の僕には理解できない。
「今日は味噌汁です」
……は?
千里さんが日本語を話す能力が乏しいのか、僕が日本語を理解する能力が乏しいのか。どっちにしろ千里さんがおかしなことを言っていることは確かである。
「今日は煮干しの日なので、煮干しを使って良いダシをとり、それを味噌汁にして、飲む!」
わかりやすく言い直してくれたらしいが、それでもよくわからない。だれか通訳をお願いします。
「というわけで、買い出しに言ってきます。君は留守番でもしてなさい」
そう、言うやいなや千里さんは部屋を後にしてしまう。なんか、よくわからないけど、置いていかれた。しょうがないので、彼女のソリティアの続きをやってみる。
何回やっても詰んでしまうので、やっぱり彼女はすごいのではないだろうか。きっとソリティアに関する魔法もあるに違いない。
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