第五章 僕とダシと魔法使い 1
二月一四日。
この日は女子にとっても男子にとっても重要な日である。
女子はこの日までにチョコレートのお店や雑誌などで今年のチョコの流行をチェック、ある女子は特別なチョコを求めお店を転々とし、またある女子は手作りチョコの試行錯誤に明け暮れる。
一方男子はなにもしないかというと決してそんなことはない。
女子が一四日に向けて動き出すのと同時にチョコ獲得のためのアピール作戦を開始する。
髪をいじってみたり、慣れない香水をつけてみたり、体育で目立って女子の気を引いたりしてみたり、でもあくまでも、俺、チョコとか欲しくないし! というスタンスは崩してはいけない。
そして、そんなもう子供じゃねえんだからチョコとか興味ねえっての! とわざと女子に聞こえるように言ってみたりする。
だけどそういいつつもげた箱と机の中の整理は怠ってはいけない。
少なくともチョコレート三つ分は余裕で入るくらいのスペースは必要だ。
そのために普段は机の中に教科書を置きっぱなしの男子もこの日ばかりは無理矢理かばんに教科書を詰め込んだりする。
――とまあ、ここまでが中高生にとっての二月一四日、バレンタインなのである。
学年末試験地獄が終わり、長い長い春休みへと突入している大学生の僕にそんなイベントがあるわけがない。
学校が既に休みなのだからバレンタインデーなんて関係がない。チョコなんてもらえなくて当然! 逆にチョコなんてもらえるほうがちゃんちゃらおかしいわけなのだ。
日本中から感じ取ることができるうきうきムードが一切発生しない場所――それが僕の部屋だ。
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