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「明日、お正月しませんか」

 一二月二三日。魔法使いはいきなりそんなことを言い出した。

え?

 いつものように耳を疑った。本当に耳鼻科には定期的に通ったほうがいいかもな、なんてことを思いながら再び彼女の言うことに耳を傾けることにした。

「明日、お正月をしようと私は言いました」

 やっぱり僕は正しく聞こえていたらしい。

お正月? なんで?

「だってお正月ってお互い地元に帰らなくちゃいけないでしょ」

 確かに僕と千里さんは共に正月には帰省予定だった。

 夏も冬も家に帰らなかったせいで、お互い両親に「正月こそは帰省するように」とうるさく言われているのだ。

「だから、この部屋でお正月を過ごせないじゃない? だから明日やるの」

別にこの部屋で過ごさなくったって。

「言わせないのー。君と一緒に過ごしたいと言ってるの」

 魔法使いは赤面していた。可愛いなこの魔法使い。抱きついてやろうか。

「というわけで明日一足早いお正月を行います。ここで!」

っていうかなんで明日なの? 明日はクリス――。

「思い立ったが吉日なの」

じゃあ、これからやればいいんじゃ――。いや、それもよくわからないけどさ。

「こういうのは雰囲気が大事なの。明日この部屋に入ってからスタートするの!」

 なんだろうこのお正月に対するこだわりは――。

 千里さんの頭の中にはクリスマスツリーもサンタクロースもトナカイも入る隙間がないらしい。彼女の頭の中には門松や獅子でいっぱいなのだろう。

「というわけで明日よろしくお願いします」

 千里さんの目はぎらんぎらんに輝いていた。もう千里さんがこの目になったら誰も止められない。それこそサンタクロースにも止められないだろう。


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