6
「明日、お正月しませんか」
一二月二三日。魔法使いはいきなりそんなことを言い出した。
え?
いつものように耳を疑った。本当に耳鼻科には定期的に通ったほうがいいかもな、なんてことを思いながら再び彼女の言うことに耳を傾けることにした。
「明日、お正月をしようと私は言いました」
やっぱり僕は正しく聞こえていたらしい。
お正月? なんで?
「だってお正月ってお互い地元に帰らなくちゃいけないでしょ」
確かに僕と千里さんは共に正月には帰省予定だった。
夏も冬も家に帰らなかったせいで、お互い両親に「正月こそは帰省するように」とうるさく言われているのだ。
「だから、この部屋でお正月を過ごせないじゃない? だから明日やるの」
別にこの部屋で過ごさなくったって。
「言わせないのー。君と一緒に過ごしたいと言ってるの」
魔法使いは赤面していた。可愛いなこの魔法使い。抱きついてやろうか。
「というわけで明日一足早いお正月を行います。ここで!」
っていうかなんで明日なの? 明日はクリス――。
「思い立ったが吉日なの」
じゃあ、これからやればいいんじゃ――。いや、それもよくわからないけどさ。
「こういうのは雰囲気が大事なの。明日この部屋に入ってからスタートするの!」
なんだろうこのお正月に対するこだわりは――。
千里さんの頭の中にはクリスマスツリーもサンタクロースもトナカイも入る隙間がないらしい。彼女の頭の中には門松や獅子でいっぱいなのだろう。
「というわけで明日よろしくお願いします」
千里さんの目はぎらんぎらんに輝いていた。もう千里さんがこの目になったら誰も止められない。それこそサンタクロースにも止められないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます