第4話 出血

「シェイド⁉︎」ピアーズとペリクロの声がシンクロした。「わかったんだ!あいつの目的がよ!」2人の呼びかけに答えると盾で分身の軍勢をを押し飛ばしシェイドは霧の中に消えていった。ジェイドが道を切り開いたおかげで残された隠れていたリー含め3人も完全包囲の状態を打破できた。3人は分身を振り切り、廃墟の中に避難した。押し寄せる分身は廃墟の入り口すぐ側まで追って来ていた。「はっ!」ペリクロはドアの近くにあった棚を蹴り飛ばし入り口を封鎖した。分身たちは封鎖された入り口をバットで破壊しようと猛攻を仕掛けている。3人は背中合わせで床に座り込んだ。「弾、まだある?」「このシリンダーのが最後だ。たが運がいいな、ここはどうやらガンショップのようだ。まだ弾薬が残ってるかもしれない」ペリクロは頷くと店の中を漁り始めた。「ここならまだ使えるパソコンあるかも...」リーはスタッフルームを探しに行った。物資調達の最中、ピアーズのすぐ側にあった棚が倒れかけた。「危ない...!」飛び込むようにピアーズを押し飛ばし危機を逃れた。「周りちゃんと見て...!死ぬかと思った!」ピアーズの上に覆い被さった状態でペリクロは若干声を荒げた。「ああ...悪かった。その、どいてくれないか...当たってるんだ」ピアーズは申し訳なさそうにいった。その反応を見たペリクロはニヤつきながら胸をより強く押し当てた。「指揮官、童貞?」「ち、違う!ていうか今こんなことしてる場合じゃないだろ!」慌てるピアーズを見て満足そうなペリクロはごめんごめんと平謝りをしてピアーズの上からどき、調達に戻っていった。何やってんだか、スタッフルームで監視カメラから2人の様子を観ていたリーはまたパソコン探しに戻った。荒れた店内だったがエリアの数字が若かったのが功を奏し、ある程度戦闘をこなせるくらいには補給ができた。どうやら“転送野郎“の能力はもとあった場所を複製し、その中に対象を選んで転送しているようだ。そのおかげで人や他の生物が居ないということ以外では本来の状態と同じであり、攻撃を受けていることになかなか気付けない。「よし、物資の調達は済んだな。出られる場所を探そう」店の奥に2人は進んでいく。「シェイド達、大丈夫かな」ペリクロは心配そうに呟いた。その様子にピアーズは明るく答えた。「平気さ、別れる前のあの顔みたか?自信に満ちたような顔してたぞ。あいつならなんとかするさ」だよね、ペリクロはそう答えると銃のセーフティを解除した。「私達も負けてられない。無事に任務、完遂するよ」ピアーズは頷く。その時建物が小さく揺れだした。ペリクロが手を床に付きしゃがんだ。「なんか来る、結構な速さだよ」ピアーズは銃を構え臨戦体制をとる、揺れは徐々に強さを増し、こちらに近づいてきているのがわかる。「約5秒で接敵、4、3、2...」一体何が近づいて来ているのだ?新羅以外にも敵が居るのか?そんな疑問がいくつか浮かんできた。ピアーズは頭の中の瓦礫を除けるように銃を構え直し無駄な考えを消した。「1...0!」ペリクロの声と同時に大きな音を立て、廃墟の裏口が何かの突進により崩壊した。「撃て!」砂埃の中に銃を撃った。2人で集中砲火を行い敵を蜂の巣にする、はずだった。風が吹き砂埃を吹き飛ばすその瞬間。猛進する大盾が現れた。シェイドが戻ってきたのだ。「おいおい!撃つことねぇだろ!まあ効かねぇけどよ」2人の誤射はジェイドの頑丈体質に救われた。シェイドのメリットは頑丈体質だ。小口径の弾丸程度ではかすり傷すら作ることができない。完全に防ぎ切ることはできないが戦車砲も受け止められる。デメリットはランダムで物理以外の耐性が極限まで下がることだ。例えば、電気に弱くなっている時に静電気を受けると、瀕死になるくらいに弱くなる。ピアーズ達は崩壊した裏口から外に出た。外は以前霧と分身で埋め尽くされている。ふとペリクロはあることに気が付いた。「マリーは?」ペリクロの不安気な表情を見るなり、シェイドは慌てて言った。「ああそうだった。安心しろ!新羅のヤツに聞かれたらまずいから今マリーが何してるかは言えねぇけどよ、とにかく無事だぜ」ペリクロはその言葉を聞き胸を撫で下ろした。シェイドは普段粗暴で正直知的とは言えないが、任務の最中には人が変わり、隊長に相応しい人格が現れる。「あれ?リーはどうした?」今度はシェイドが聞いた。しまった。リーはまだガンショップの中にいる。迎えに行きたいが瓦礫により裏口は塞がれてしまっている。どうしたものかと思案していると、シェイドの背後から金属バットが振り下ろされる。ガキンと音を立ててバットがへし曲がった。分身がピアーズ達を発見し攻撃を仕掛ける。「チッ、もう来やがったか。だが好都合だ」シェイドは奇襲を仕掛けた分身の首をへし折りながらそう言った。2人はシェイドの言葉が理解できなかった。分身の襲撃が好都合とは一体どういう意味なのか。「どういうことだ?」ピアーズは率直な疑問を問いかけた。「さっきマリーを連れて行ったのも、こいつの目的が分かったからだ。その目的ってのはな!"時間稼ぎ"だ!」

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エリア42 ぴあす @Pierce_san1

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