第2話至高の評決は断罪の証
ある日突然日常という言葉の意味は失われた。
それはこれからも今までと同じ穏やかな日々が続くであろうという人々のささやかな願いが崩れた日でもあった。
連綿と紡がれてきた知識や技術の蓄積や数々の天才たちが残した英知もその日常を奪った災厄の前には無力であり、その現実が人々の無力感と絶望を肥大させることに繋がった。
未知の災厄でありながら既視感を抱かせたそのウイルスに対して世界は事態を甘く見ていたのかもしれ、ない。
当時は様々な最先端の技術や専門家たちの知見によって簡単に無力化できるだろうとされていた予測はひと月もしないうちに否定されることとなる。
世界的な爆発的感染拡大はあっという間に世界のシステムが維持不可能になるほどの夥しい犠牲者を出し、
過去に例を見ないほどの歴史的なパンデミックに直面した人々の理性はこれまでの文明社会を維持することが不可能になるレベルで崩壊していった。
それに加えてウイルスがもたらしたとみられる生物の異形化や科学的に証明できない自然現象が頻発したことによる「現実」の変化で人間社会はまともな治安維持ができなくなっていた。
次第に国家という枠組みも怪しくなっていき、それぞれ生き残ることがかろうじて可能だった国際企業グループは独自の日常ネットワーク構築による自衛へと舵を切ることとなる。
こうして人類はかつて別れを告げた筈の「この世のすべてが弱肉強食」という最古の自然界の掟に再度縛られた。
人類が運命という宿敵との苦々しい再会を自覚した、新たな神話の時代が始まった日の出来事であった
燃える舞台の審査録ー世界が目醒めて眠るまでー しなちー @33481767
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