第4話

寝とった女

その1/別れた彼



アユムはコンピューター開発事業の会社に勤務していた。

新卒で入社後すでに6年…、ずっと総務課だった。


...



彼女が心の奥底で”その意思”に達したのは、ある難病の発症があった…。

まだ前兆の段階で、医師からは更なる検査を勧められていたが、アユム本人にはわかっていたのだ。


彼女は、自分が”その家系”にあったことを、高校に入った直後、親から告げられていた。

直近ではアユムの父方の祖母が発症し、失明に至った。

彼女が予想外の早い発症に、大きなショックを受けたのは言うまでもない。



...



彼女は自分の病気だけでなく、家族のことでも深く悩んだ。

アユムの父は1年前に脳溢血で急死し、母は若い頃からのリュウマチを悪化させ、すでに日常生活にも支障をきたしていたのだ。

父の死後は兄夫婦が同居してくれたおかげで、今は何とか通常の生活を過ごしているが…。


この上、自分がいずれ失明すれば、兄夫婦にも更なる負担が及ぶ…。

それを考えると、自分なんかいなくなっちゃえばみんなも助かるという思いに至ってしまうのだった…。

アユムの心は、そんな不安の底なし沼に陥っていたのだ。



...



その時、付き合っていた恋人にもさりげなく”打診”したが、その感触はケンもホロロで返ってきた。

もっとも、この時のカレは彼女が望むリアクションを備えているような、とてもそんなタイプではないことは、付合う当初から承知していたことではあった…。


だがこの時、彼女は脳裏にある思いが浮かんだ。

”前の彼と続いていたら…。体に不自由を抱えていても、私に寄り沿って生きてくれたかも知れない”と…






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