第5話

その2/ある心残り



前の彼は同じ会社の営業部で1年後輩だった。

とてもいい関係では数年続いたが…、結婚を前提とした段階に至ったところで破局したのだ。



...



その彼は見事に寝取られた。

推進企画部の同期の女によって…。

その名は、影山ジュリ…。


...



彼は志田慎也といった。

慎也はジュリに誘惑されたと主張していたが、ジュリは否定していた。


”慎也はアユムのことは好きでも、あの貧弱な体が物足りないからあっちで満足できなかったのよ。だから、結婚には躊躇してるって言ってた。私の体を抱きたい気持ちを、悶々と我慢してたって、告白されちゃったわ”


彼女はそんな感じで社内に触れ回っていたのだ。



...



アユムは、ジュリが自分たちの結婚を壊すことが目的だったことを確信していた。

それはある理由で…。


アユムは潜在意識で契約を交わし、消える覚悟はできていた。

しかし、”その時期”が差し迫った今、彼女にそれを躊躇わせる、ただひとつの心残りがあった。



...



アユムは決心した。


”ジュリには彼を寝取ったことを認めさせる…”


そして明後日の日曜日、影山ジュリをある用件で会社に呼び出すことにした。






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