【必要不可欠だった影武者】

「私の名はチャーヤー。影という意味の名です。」



「影……?」



「はい。私はサンジュニャー様の影武者として創り出されました。」



初めて知ったその存在。

スーリヤは驚くばかりだ。



「君は……いつから影武者を……?」



「スーリヤ様とサンジュニャー様が結婚なされた頃からです。」



数ヶ月どころの話ではなかった。

何年も前から彼女は存在していた。


自分は彼女をサンジュニャーと疑わずに暮らしていたのだ。



「本当に失格だな……。妻と影武者の区別もつかぬとは……。」



かぶりを振り、再び落ち込むスーリヤ。



「それは仕方のない事です……。そういう存在に……私は創られたのですから……。」



悲しそうに微笑むチャーヤーを見て、スーリヤは心を痛めた。



「知らなかったとはいえ……申し訳ない事をした……。夜伽の相手までさせて……本当にすまない……。」



「いいえ、お気になさらずに……。それを含め、サンジュニャー様の代わりをするのが私の務めです……。」



使命を全うするチャーヤーが不憫でならない。



「何年も私の相手をしてくれていたのだな……。君を初めて抱いたのはいつの事だろう……。なぜサンジュニャーは君に夜伽まで……。」



愛し合っていたはずなのに……。

彼女はその行為を拒絶していたのか……。

抱かれる事が苦痛だったのだろうか……。



「あの、スーリヤ様……?私が夜伽の相手をしたのは……この数ヶ月間だけですよ……?」



それ以前はちょっとした身代わりをしていたのだと話す。



「待て……。だとしたら何が……?サンジュニャーに何が起きた……?」



数ヶ月前に姿を消したサンジュニャー。

何か良からぬ陰謀にでも巻き込まれたか……。



「私にも分かりません。後は宜しくとだけおっしゃって……。いつもは段取りなど話してからお出掛けしていたのですが、あの日は何も言わず飛び出して行ったんです……。」



話を聞き不安になる。

突如姿を消した妻。

何も言わず、身代わりを置いて出て行った。



「まさか……駆け落ち……?」



なぜ離れて行った……?

私の愛する女は……なぜ傍にいない……?

ウシャス……そしてサンジュニャーまでも……



落胆するスーリヤに慌てるチャーヤー。



「それはないと思います!サンジュニャー様はスーリヤ様を愛していらっしゃいましたから!」



「ならばなぜ姿を消した……?なぜ影武者など必要だったのだ……?」



虚ろな目でチャーヤーを見る。

自暴自棄になりかねない様子だ。



「それを……スーリヤ様のその状態を心配してですよ……。愛しているからこそ立てた身代わりです。」



サンジュニャーの愛は失われてはいない。

だとしたらやはり陰謀に……?

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