インドラの天国スワルガ

【今が最高潮かも知れない】

メル山に位置するその国は、トヴァシュトリによって建てられた。


アマラヴァティを首都とするその国は、天の木々で飾られ、鳥の歌と花の香りにあふれている。



「ぬぅ……。何かが足りん……。」



玉座に座るインドラが呟く。

何が足りないのだろう……。


ふと、隣を見てハッとした。



「王妃がおらんではないか!嫁じゃ嫁!嫁を探さねば!」



そしてインドラの物色が始まった。


自分の嫁。

王妃に相応しい女性を探し歩く。



その彼の目にとまったのはシャチー。

彼女は異性を惹きつける性的魅力の持ち主だった。


そのセックス・アピールにより、インドラはシャチーを選ぶ。



「シャチーよ。儂の妃にならんか?」



「え、えーと……。私、悪魔の娘ですけど……?」



彼女の父親は悪魔のプロマン。



「親などどうでも良い。儂はぬしを妃にしたいのじゃ。というか、する!」



「えっ!?きゃーーっ!」



返事を聞く前に彼女を連れ去るインドラ。


娘を奪われたプロマンは彼に呪いをかけようとした。

だが、先手を打ったインドラに殺されてしまう。


強引に連れ去られたシャチーだが、後にインドラと心を通わせ王妃となる。



インドラは白衣を纏い、花輪と輝くブレスレットをつけ、王冠を乗せ、輝かしく玉座に座っていた。


隣には王妃となったシャチーがいる。


かしずく者は、マルト、上位の神々、賢者、聖者である。

彼らの罪なき清浄な魂は火のように輝いていた。


インドラの天国には、悲しみも、苦しみも、恐れもない。

なぜなら、そこに住んでいるのは、繁栄・宗教・歓喜・信仰・知性の精霊であるからだ。


また、風・雷・火・水・雲・植物・星・遊星などの、自然界の精霊も見出される。



再創造は、天の精霊アプサラスとガンダルヴァの歌と踊りで用意される。


英雄と神聖戦士が離れ業を演じ、神聖儀式が執り行われる。


神聖な使者達は天の戦車に乗ってあちらこちらと行き来する。



戦士の神に支配されるスワルガは、永久的にせよ一時的にせよ、とくに戦士の住居であると考えられた。



『マハーバーラタ』で倒れた両陣営の英雄達は、この天国に歓迎される。


戦士の義務を果たした者は、全てここに受け入れられるのである。



この天国スワルガにおいて、インドラは大いなる光輝を放つのだが──

ヴェーダの時代の終わりと共に、彼の栄光も次第に廃れて行く事となる。

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