豊穣神から創造神へ

【宇宙を創ってみた】

徐々にヴァルナの役割を奪って行くインドラ。


その中の豊穣神としての役割は、やがて創造神という新しい役割に拡大する。



「どれ、宇宙を創るとするかのぅ。」



頭に鉢巻を巻き、耳に鉛筆を乗せたインドラが、両の手のひらにプップと唾を吐きかける。



「ふむ。改築した方が良さそうじゃな……。」



インドラは無から宇宙を創らず、元々あった宇宙を所有し、リフォームする事にした。



「まずは空間を測らんとな。」



取り出したのは『太陽』。

彼は太陽を道具として使い、空間を測った。



「空間は6つじゃな。」



宇宙には広大な空間が6つあり、そこには存在する全ての物が含まれていた。



「ここをこうして……あそこにこれを置いて……ぬうっ、はみ出しおった!」



カリカリと設計図を書くインドラ。

線が曲がったりはみ出したりと、悪戦苦闘しながら書いている。


鉛筆でカリカリ。

消しゴムでゴシゴシ。

失敗して頭ガシガシ。



「完成じゃあ!」



ようやく出来た設計図。

見事な物が出来上がった。


反してインドラは、頭ボサボサでボロボロだった。

豪快な彼は、精密な仕事が苦手だったようだ。


そしてインドラは宇宙を家のように建てた。



「この辺じゃな……。」



設計図を見ながら4本の隅柱を立て、柱と柱の間に世界の壁を作った。


雲のある空で屋根を葺き、休憩。



「建築の、合間に楽しむソーマ酒かな。か~っ、美味い!」



一句詠み、ソーマ酒で体力を回復した彼は建築を再開する。



「うむ!設計図通りに出来上がったな!」



完成した宇宙に大満足のインドラ。


それではインドラ神のお家訪問といきましょう。



「インドラさん、入口はどっちですか?」



玄関らしき物が2つある。



「両方じゃよ。東の方はな、太陽を受け入れる為の入口なんじゃ。じゃから毎朝開いておる。」



「へぇ~。それじゃ西の入口は?」



「そっちは毎夕短時間だけ開くんじゃ。周りに闇が見えるじゃろ?その中にな、儂が太陽を投げ込むんじゃよ。」



「日の出と日の入りの事ですね?」



「うむ。他にも使い道があってな、ここで神々が犠牲と献酒を分配するんじゃ。」



という説明を受けながら、お家訪問は終了した。



インドラは天を支え、2つの世界と大気を維持し、大地を持ち上げて拡げ、自分の創造したものを守り続けた。


ソーマ酒によって強くなったインドラは、天と日、月と季節を調節するエネルギーを持っている。


このソーマ酒に対する彼の愛と依存。

これが弱点になるのは、もう少し後になってからの事である。

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