【和平条約──条件を呑んで】

「貴方達、決着つかないでしょう?とりあえず和平条約を結びなさいよ。」



「はああ!?俺の方が強いのに、何でそんなの結ばなきゃなんねぇんだよ。」



「何を言うか!儂の方が強いに決まっとるわい!」



「呑み込まれたくせに、どの口がそんな事を言うんですか?」



ぐぅ、と言葉に詰まるインドラ。


こやつ、サラッと痛い所をつく嫌みな奴じゃな……。


後に盟友となる二人ではあるが、この時はそう思っていた。



「わははっ、やっぱり俺の方が強いじゃねぇか。和平条約なんか結んで堪るか!」



そんな気など更々ないヴリトラ。

ヴィシュヌはため息をつく。



「別に構いませんよ。このまま戦い続けたら共倒れですからね。インドラ一人の犠牲で済むのなら、こちらとしては願ったり叶ったりです。」



「共倒れ……」



いずれは死ぬという事か。

それならば和平条約を結んだ方が良いかもしれない。


ヴリトラがそんな事を考えている頃、インドラはヴィシュヌに食ってかかっていた。



「ぬしという奴は!儂を犠牲にするつもりじゃったのか!?」



「本気に取らないで下さいよ。ヴリトラに条約を結ばせる為ですって。」



この時。

平気な顔であんな事を言うヴィシュヌを、インドラは腹黒い奴だと認識した。


らしい(笑)



「仕方ねぇ、結んでやるよ。けど条件を呑んでもらうからな。」



死ぬよりはいい。

いや、死なない条件を呑ませてやる。


ニヤリと笑うヴリトラに、フッと笑うヴィシュヌ。

想定範囲内だったらしい。



「宜しいですよ。条件を述べて下さい。」



「俺は、木・石・鉄・乾いた物・湿った物では傷つかない。そして、インドラは昼も夜も俺を攻撃する事はできない。呑めるか?この条件。」



言われた条件を整理するヴィシュヌ。

そして、人知れずニヤリと笑った。



「呑みましょう、その条件。インドラもそれで良いですか?」



「ぬしが良いなら構わん。」



実はヴィシュヌの笑みを目撃していたインドラは、何か策があるのだろうと受け入れたのだ。


こうして、インドラとヴリトラの間に和平条約は結ばれた。



「して、何か策があるのじゃろう?」



ヴィシュヌに問いかける。



「ええ、まあ。ヴリトラの抜け穴は見つけましたよ。」



さすが抜け穴を見つけ出す天才。

伊達にアスラ退治はしていない。



「抜け穴とな?何じゃそれは。」



フフッと笑ってヴィシュヌは話す。

ヴリトラを倒す為の抜け穴を──。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る