【着かない勝負】

凄まじい吼え声が響く。


近づいたインドラに、ヴリトラが吼えたのだ。

その吼え声に天は震え、神々は引き下がる。


だがインドラは違った。

彼は大量のソーマ酒と、地上の祭司達の賛歌に鼓舞され、犠牲によって力を増しているのだ。



「情けない奴らじゃのぅ!あんな声ごときで引き下がりおって!」



嵐の神インドラがその威力を発揮する。

ヴリトラの99の城砦に嵐を叩きつけ、遂にヴリトラ自身との対決を迎えた。



「うぬぅ!やはり一筋縄ではいかぬか!」



神に対抗して生み出されたヴリトラだ。

さすがに手強い相手である。



「無駄無駄無駄ーっ!俺は負けねぇぜ!」



巨大な尾を振り回され、侍者や従者は既に戦闘不能となっている。



「儂は──儂は負けられん!地上からの賛歌とこのソーマ酒をかてにぬしを倒すのじゃ!」



ぐいっとソーマ酒を飲み干して、猪突猛進で突っ込むインドラ。



「わはっ、いらっしゃ~い。」



大きな口を開けて迎えるヴリトラ。



「ぬう!と、止まらん!ぬかったわーーっ!」



勢い余ってスポッと口の中へ……。

ごくりと呑み込まれ、万事休すとなる



「うわわっ、インドラが呑み込まれたっ」



見守っていた神々がアワアワと慌てふためく。



「う~ん、不味い!もう一杯!な~んてな!わははははっ」



上機嫌で某CMの真似をするヴリトラ。



「皆さん!インドラを助けますよ!」



諸天すなわち神々が手助けをする。

何だか知らないが、その手助けでヴリトラがあくびをした。



「今じゃっ!」



そのチャンスを逃さず、開いた口から飛び出すインドラ。



「ぬうぅ、汚いのぅ……」



呑み込まれ、粘液でぬるぬるベトベトぬちゃぬちゃになっていた。



「というか臭いわっ!洗濯代を払えい!」



「何で俺が!払うより呑み込んでやるぜ!」



再び対峙するインドラとヴリトラ。

だが、これまでの戦いを見れば決着はつきそうにない。

見守っていた神々も、どうしたものかと考える。



「仕方が無いですね。」



立ち上がったのはヴィシュヌ。

ちょっと面倒そうに、二人の対決の場へと足を運んだ。



「はいはい、二人ともストーップ。」



「何じゃヴィシュヌ!邪魔するでないわ!」



インドラとヴリトラにギロリと睨まれ、心外だとムカつくヴィシュヌ。

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