巨大な蛇龍ヴリトラ

【対インドラ用蛇龍】

カシュヤパさ~ん、何してんの~?


はい。この人、あらゆる生物の父ですね。

デーヴァ・アスラ・ラークシャサ・人間・動物などを生み出す、偉~い七聖仙のお一人。


そんなカシュヤパさんが、神に対抗できる生き物を授かろうと儀式を行っています。



「きた来たキターーッ!」



炎の中にうごめく黒い陰。

そこに、巨大な蛇龍が誕生した。



その名は『ヴリトラ』

干魃かんばつを起こす悪龍だった。



このヴリトラ。

神に──と言うより、インドラを倒す為に生まれたと言っても良い。


インドラがヴリトラと戦う事により、水の供給が成されるのである。



「さ~てと。人間を減らしてやるか~。」



鼻歌を唄いながら、ヴリトラは巨大な身体で天の河をせき止める。


その為、地上の7つの河──すなわちガンジス河は涸れ果てた。


更に、雲の牛雨雲を投獄して干魃を起こす。


果ては太陽を暗黒に包み、地上を飢饉に陥れて人間を苦しめた。

人間は神々に向かってヴリトラを退治して欲しいと嘆願する。


インドラが誕生したのは、人間がヴリトラに苦しめられているこの頃の事であった。



「誰が我々を助けてくれるのですか!?」



人間達の叫びを聞いたインドラが立ち上がる。



「儂に任せぃ!」



「あっ、こらっ、それ儂の!」



神々に捧げられたソーマ酒を、兄弟であるトヴァシュトリヴィシュヴァカルマンから取り上げて。



「うるさいわ!儂の力の源じゃ!黙って飲ませんか!」



ごきゅごきゅ喉を鳴らして大量に飲む。



「か~っ、うまい!これが無くては始まらん!」



グイッと口元を拭い、更にごきゅごきゅ飲みまくる。



「アル中が……。飲み過ぎは毒になるぞ。」



「分かっとるわい!もう一口だけじゃ、もう一口だけ!」



この時インドラが飲んだ量は、牝牛100頭1日量20~30ℓ×100頭=2000~3000ℓに匹敵していた。


このソーマ酒──インドラの力の源ではあるが、それ故に彼は満たされないかつえを持つ事となる。


まさにアル中(笑)



「では参ろうか!悪龍ヴリトラ退治に出発じゃあ!」



ソーマ酒で力をみなぎらせたインドラが、出陣の準備を整える。



「行くぞぬしら!儂の足手まといになるでないぞ!」



侍者と従者を連れ、二頭の馬が曳く戦車に乗って一行は出発した。

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